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“実質無料”謳い高額なローン契約…歯科矯正巡り集団提訴。世界的権威が担当医と勧誘も「1度も診察されなかった」との声も続出

「実質無料」という誘い文句に乗って高額なローン契約を結んだ歯科矯正治療が、途中で施術が受けられなくなったとして、男女153人が歯科医院を運営する「デンタルオフィスX」や「グランシールド」など3社と経営幹部ら18人を相手取り、計約2億円の損害賠償を求める訴訟を起こした。

報道によれば、原告らはデンタルオフィスXの医院とマウスピースを使った施術をローン契約するとともに、グランシールドとの間でモニターモデル契約を締結。154万~187万円の施術費が毎月一定額支払われるモデル料で実質無料になるという話だったようだが、そのモデル料の支払いは昨年3月からストップしているとのこと。

原告である被害者には高額なローンが残され、また上顎と下顎のかみ合わせが悪くなるなどの健康被害も出ているとのこと。いっぽう、都内2か所にあった医院は閉院しているといい、原告団は刑事告訴の可能性も示唆しているようだ。

コロナの影響で増える歯科矯正の治療希望者

153人の被害者が集団訴訟を起こすという事態となった今回の件だが、実際のところは少なくとも1,400人が勧誘され契約しているとのこと。いわば氷山の一角といったところで、今後より巨額な損害賠償を求める事態になることも考えられそうである。

歯並びが悪いことで起こる噛み合わせの悪さや発音の不明瞭などの解消、あるいは美容的な意図で歯並びを良くしたいという動機から、施術を希望する者が引きも切らないという歯科矯正だが、近年は特に施術を希望する者が増えていたとのこと。

というのも、このところはコロナの影響でマスク生活が続いており、人前では常に口元が覆われている。そのため、歯科矯正の治療していることが周囲に気付かれにくくなっており、そんな状況の間に……といった理由のようなのだが、そういった背景も逆に被害拡大の一因となってしまったのかもしれない。

いっぽうで、後からキャッシュバックを受けられるため、実質無料でサービスが受けられるといった誘い文句で、何らかの契約をさせるといった今回のような手口は、いわゆるモニター商法と呼ばれるもの。

今回の件では、歯科矯正の治療費に関して各々のSNSなどでPRをすれば、合計で150万円以上の報酬が支払われるというのが具体的な話だったようだが、国民生活センターによる注意喚起によれば、こういったモニター商法の典型的パターンだと、キャッシュバックが振り込まれないといった話どころか、事前に聞いていない費用が後々発生するといったケースもあるということで、こういう話には安易に乗らず、慎重に判断すべきと呼び掛けている。

専門的知識や経験のない歯科医が治療に当たるケースも

厚生労働省の医療施設調査によれば、2021年10月時点で全国に6万7,899箇所も存在し、巷ではよく「コンビニより多い」とも言われる歯科医院。

昭和40年代頃、高度経済成長による生活習慣と食生活の変化で虫歯の患者が激増し、深刻な歯医者不足となったことから、国が歯医者の育成に力を入れたことが、ここまで歯科医院が増えた理由のひとつとされているのだが、現状では明らかに飽和状態といった状況。歯科医院側としても他の医院と患者の奪い合いとなるなか、その1人1人の単価も上げたいのか、実入りのいい施術ということで歯科矯正をしきりに勧められるといったことも、いわば“あるある”といった話である。

ただその反面で、歯科矯正治療は難しい症例でも3~4年ほどの期間で治療が終わるとされるところ、5年以上も治療を受け続けても一向に治らないということで、トラブルに発展するといったケースは数多いとのこと。また、長期間におよぶ治療が必要な歯科矯正だが、その途中で患者が転勤や進学などの理由で転院を余儀なくされた際に、未治療分の費用を返金しないといった、金銭的なトラブルもよく発生するとのことである。

いっぽう、歯科矯正といえばワイヤーを用いた方法がお馴染みだが、最近ではマウスピース型の装置を用いたアライナー矯正と呼ばれる施術法も存在。患者側からすれば、ワイヤータイプの矯正装置より目立たず、食事や歯磨きのときは取り外せるといったメリットがあり、また歯科医側としても、歯型さえとれば後はコンピュータが自動的にマウスピースを作成してくれるという手軽さもあり、急速に普及が進んでいるという。

しかし、そんなアライナー矯正は適応できる症状が比較的限定されるといい、場合によっては専門性の高い矯正専門医でも困難な治療になることも。ところが、矯正歯科専門の開業医団体である日本臨床矯正歯科医会の調査によれば、歯科矯正に関する専門的な知識や経験を持たない一般の歯科医が、こういった治療にあたることも多いようで、さらには非常勤の矯正歯科医が限られた時間内で治療を担当するといったケースも横行するなど、明らかに診療態勢が整っていない医院も結構あるようなのだ。

実際、今回裁判沙汰にまで発展した件でも、マウスピース型の装置を用いた矯正を行っていたようなのだが、いっぽうで勧誘の際には、年間750例以上の症例を扱ったとして世界的な賞を受けるなど、歯科矯正の業界ではかなり著名な歯科医が治療に関わるといったPRをしていた模様。“実質無料”という魅力はもとより、そういった面を信頼し施術を決めたという向きも多いようなのだが、実際にはその歯科医による施術は受けれなかったという声も、SNS上では多くあがっているところ。

さらに挙句の果てには、多くの患者が治療を放置されてしまうという事態も招いているだけあって、今回の事態はいわゆる詐欺的な行為に関しての真相もさることながら、果たして適切な診療態勢が整っていたかどうかも、今後大いに取沙汰されそうなところだ。

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