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園児同士の衝突で後遺症…園に約2000万円の賠償命令に賛否両論。老人ホーム同様、もはや幼稚園経営はリスクでしかないとの声も

幼稚園で他の園児とぶつかった我が子が後遺症を負ったのは園の責任だとして、保護者が訴えていた裁判で、岐阜地裁が園側に約2,000万円の支払いを命じたとのニュースが、大きな波紋を呼んでいるようだ。

報道によれば、事故は17年7月に起きたといい、園児らが遊具を片付けるため遊戯室の外にある道具箱へ行き来していた際に、その園児同士が衝突。頭を強く打った片方の男児は内斜視と診断され、後遺障害が残ることに。もういっぽうの園児も前歯が折れたという。

判決では、道具箱が遊戯室から死角となる場所に置かれていたとし、「不意に衝突する事故が発生する危険性は十分認められ、園側が予見することは容易だ」と指摘。

また、園児らの近くで監視・監督するための教諭を配置する義務、さらに園児らが衝突しないような場所に道具箱を設置する義務を園側が怠ったとし、事故と内斜視について「相当因果関係が認められる」と判断。原告が求めた請求額と同額の支払いを命ずる形となったようだ。

高額賠償を命じられた幼稚園に同情的な見方も

このところ報道などでも頻繁に見聞きする、幼稚園や保育園における痛ましい事故。

昨今では規制緩和による“保育の質”の低下も叫ばれるとあって、明らかに園側の過失が原因とされる事案も多いといったところで、例えば2021年には、福岡県中間市にある私立保育園で、園児が送迎バスの中に置き去りにされ、夏場ということもあり熱中症で死亡する事故があったのも記憶に新しい。

確認を怠った元園長ら2人は業務上過失致死罪に問われ、2022年11月に執行猶予付きの有罪判決が下ったのだが、いっぽうで民事では、亡くなった園児の父親からは計約4600万円、さらに母親からも計約5400万円の損害賠償を求める裁判が起こされており、ともに現在も係争中だ。

ただ、そのいっぽうで最近ちょっとした話題となったのが、幼稚園での昼食中に子どもがウインナーを誤嚥したことで重篤な後遺症を負ったのは園側の責任ということで、その保護者が計約5億4000万円の損害賠償を求めて訴え出たという裁判

さいたま地裁の判決は、園側の一部対応に安全配慮義務違反があったと認め、計550万円の支払いなどを命じるものとなったのだが、SNS上などではこの裁判に対して、親御さんの気持ちも分からなくないものの、一部からは「不慮の事故としか言いようがないやろ…」といった声も少なからずあがっていたのだ。

今回の園児同士がぶつかった件に関しても、やはり後遺症を負った子やその親御さんは大変気の毒であるとしながらも、約2,000万円という園の存続も危ぶまれるような高額な賠償を命じられた園側に対して、ある意味で同情してしまうといった見方もあるようなのだ。

周り巡って保護者側が苦しくなる流れに?

SNS上では、子どもに何か一大事があれば保護者が何でもかんでも園を訴えるという、最近のこういった風潮を憂うといった声もあがっているのだが、そういった人々が訴えているのが、そういったケースがより増えれば、幼稚園・保育園側も入園に際しての約束事などがより厳格化され、そのいっぽうで退園させられるケースはより増えるのでは……といった恐れ。

つい最近では、愛知県の特別養護老人ホームにおいて、職員らが見守りを怠ったために入所者の80代女性が食べ物を喉につまらせて死亡したとして、特養側に1,370万円の支払いを命ずる判決があり、それに対してひろゆきさんが「認知症の高齢者は預からないのが安全、、と」と発言するなど、施設入所のハードルが上がるといった意見が噴出した。

その件と同様に幼稚園や保育園においても、今後は事故リスクをもたらしかねないと見做された子どもに関しては早々に退園してもらう、あるいはそもそも入園させないといった姿勢を、園側が取りかねないというのだ。

またいっぽうでは、こういった園側が多額な賠償を負わされるケースが増えれば、ただでさえ薄給な幼稚園教諭や保育士のなり手がより減ってしまうどころか、幼稚園・保育園自体も「経営リスクが高すぎる」として、下手な話誰もやりたがらなくなるのでは……といった危惧も広がっているところ。

要は、この手の訴訟沙汰が増えることで、子どもを預けたいと思う保護者側が周り巡って苦しくなっていくのは必至……という話なのだが、今回の園児同士でのぶつかりの件をはじめ、訴え出た保護者らの辛い思いも重々理解できるだけに、なんとも難しい問題だと言えそうである。

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