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なぜ市場は梯子を外されたのか?黒田総裁は「緩和祭りの後片付け」を始めた=E氏

日銀は11月1日に開催された金融政策決定会合で、大方の予想通り金融政策を現状維持としました。一方で物価目標達成の時期を18年に先送りしています。今会合でアクションを予想する声は事前にほとんどなかったのでノーサプライズでしたし、実際、会合前後の株価や円相場の反応は、黒田バズーガ第一弾である2013年4月の異次元緩和発表以降では珍しいくらいに変化に乏しい静かな日となりました。

しかし、日銀会合後の黒田日銀総裁会見を踏まえてのメディアの論調は、
・物価2%「18年度頃」…日銀、5度目の先送り(読売)
・日銀「黒田流」名実共に壁に(毎日)
・地上に降りたピーターパン、物価2%達成へ現実路線-黒田日銀(Bloomberg)
等のように、おしなべて否定的なトーンが目立ちます。

本日は今回(10/31~11/1)の日銀金融政策決定会合に対する見方や、これを踏まえてのマーケットの方向性について考えてみたいと思います。(『元ヘッジファンドE氏の投資情報』)

プロフィール:E氏
国内大手生保、ゴールドマン・サックス、当時日本最大のヘッジファンドだったジャパン・アドバイザリーでのファンドマネージャー経験を経て、2006年に自らのヘッジファンドであるINDRA Investmentsを設立し国内外の年金基金や富裕層への投資助言を開始。2006年10月からのファンド開始後はリーマンショックや東日本大震災で、期間中TOPIXは5割程度下落した中で、6年連続のプラス(累積30%)のリターンを達成。運用歴25年超。

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夢から覚めた市場に「日銀の株価買い支え」はもはや通用しない

サクラ演出

まず、発表直後の反応がノーサプライズかどうかという点に関しては、「日銀のサクラ演出でサプライズがなさそうになっていた」だけです。

過去数年の株式市場は過剰な位に日銀おねだり相場の色彩が強くなっており、今回のように会合までの株価水準が高い場合は、何らかの期待がマーケットに反映されている場合がほとんどでした。

従って、大方の事前予想通りのノーアクションとなった場合でも、マーケットは失望で下がり易くなっていましたが、その一方で、ノーアクションなのに材料出尽くしで上がるようなケースはほとんどありませんでした。

それが、今回非常に静かな反応だったのは、他でもなく日銀自らの演出があったからに他なりません。1日の日本株は前場弱含んだこともあり、707億もの日銀による日本株ETF買いが出ています。

別にルールはありませんが、過去は日銀金融政策決定会合前後に株価操作的なETF買いが出ることは稀でしたので、1日の日銀のアクションに私はかなり違和感を覚えました。

元来、黒田日銀は株価水準を金融政策の成績として考えているフシがあるのに、自らの決定内容に対する市場の第一印象を素直に耳傾ける事を放棄したのです。

これでは番組を盛り上げるために、テレビ局の動員でバラエティショーの観客席で笑い声をあげるサクラと何ら変わりがありません。

従って、市場の反応は1日のマーケットの動きほど好意的ではなかったと私は考えています。

夢の終わり

次に、会見後に多くのメディアの論調がネガティブになった理由について考えてみます。

想定通りノーアクションだったのに、なぜネガティブな論調になったかというと、それは「ノーアクションであっても、従来はリップサービスをすることが多かったのに、今回はなかった」という点と「目標未達に対して開き直りとも思える発言をした」為でしょう。

そして、それもこれも「前回の決定会合(9/20~21)で日銀が誤ったメッセージを送った事で、現在日銀が行っているオペレーションの方向性に対するマーケットの認識が不十分だった」ことに尽きると思います。

これらについて順を追って説明します。

Next: 日銀とメディアの共謀。「これは緩和の強化だ」というミスリードの罪

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