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日本の世帯所得、20年で20%減という異常事態はなぜ改善されないのか=吉田繁治

日本の世帯所得が激減している

わが国の世帯所得(子供あり世帯)では、1995年が781万円、2015年が707万円です。20年間で119万円減(9%)という、世界でも例を見ない異常事態を示しています。

子供のいる世帯、いない家庭、高齢者、単身を含む全世帯(5,300万世帯)では、同期間の平均所得は20%も減っています。賃金を含む賃金の低下と、非正規雇用率の増加を示すのが、この世帯所得です。

失業率を見ても日本の経済状況はわからない

米国では、「失業率」が直接に景気を反映します。しかし、日本ではそうではありません。日本の失業率はむしろ、産業が賃金あたりの生産性を高める策を取っていること、海外投資の増加、非正規雇用への切り替えなどを示すことが多いです。

つまり、日本の経済状況を把握したい場合、世帯所得の増減を見なければならないのです。

ここに示した、「雇用文化の違い」「正規雇用と非正規雇用の時間当たり賃金の違い(賞与を入れると、1/2から1/3)」という前提を無視したエコノミストやリフレ派の「単純な失業率比較」は困ったものです。

正規雇用の減少、非正規雇用の増加を見るべき

日本では、正規雇用の減少および非正規雇用の増加(振り替わり)が、世帯所得の面で米国の失業率の増加に相当するものです。

失業率が下がって、景気回復の実感があるかないかという抽象的な論議になるのは、厚労省がこの2つの要素を景気指標に入れていないからです。

リストラと復職がある米国では、「失業率の増加=不況と世帯所得の減少」であり、「失業率の低下=好況と世帯所得の増加」です。

日本では、この「=」に長い猶予の時間があって、長期で平準化されています。

<日本の正規雇用と非正規雇用 ※個人事業は除く>

       1994年  2017年  増減数   増減率
――――――――――――――――――――――――――――
・正規雇用  3808万人 3473万人  -335万人  -9%
・非正規雇用  974万人 2034万人 +1060万人 +109%
――――――――――――――――――――――――――――
       4782万人 5505万人  725万人  +15%

出典:正規雇用と非正規雇用労働者の推移 – 厚生労働省

(1)上場の大手企業(約3,000社)で2%弱/年のベースアップがある正規雇用は、23年間で335万人減っています。

(2)他方、勤務の年数や技術の習熟による加算給はほとんどなく、低い時間給が続く非正規雇用(50代でも1,270円/1時間)は、974万人から2,034万人へと倍増しています。

以上が、世帯所得平均(夫婦2人)を減らしたのです。世帯所得こそが、景気を左右するものです。

Next: なぜ、好況なのに「景気回復の実感がない」は起こる?

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