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電気代月10万円も!? 新電力契約者を襲う電力不足、背景に中国の燃料爆買いか

寒波の影響で全国的に寒空となった、連休明けの日本列島。連日続く厳しい寒さ、さらにコロナ禍の自粛などにより自宅にいる方も多いこともあり、電力需給に関しては各地で逼迫(ひっぱく)した状況が続いているようで、12日には梶山弘志経済産業相が閣議後記者会見において、「電気の効率的な使用をしてもらいたい」と呼びかけるに至った。

そんななか、いわゆる「新電力」と契約している利用者の間で、電気料金があり得ないほど高騰しているとの報告がこのところ続出しており、大いに話題になっている。

SNSを見てみると「電気代1日5000円超え」「10万円コース」といった、電気代がかかる真冬の時季とはいえ、いくらなんでもあり得ないほどの電気代となっているとの声が。なかには、解約を模索する動きも出ているようで、一種の混乱状態に陥りつつある状況だ。

「市場連動型プラン」の思わぬ落とし穴

2016年の「電力の小売全面自由化」以降、全国各地に登場した「新電力」各社。従来からの送電網を用いることで供給品質の安定性を保ちながらも、料金はリーズナブルになるということで、多くの方が乗り換えを検討、あるいは実際に乗り換えるという動きを見せた。参入する会社もガス会社や石油・エネルギー関係の会社から、CATVなどの通信会社など多岐に渡り、現在では600社以上の企業が事業者として登録している。

なかでも、その低価格ぶりが以前から注目されていたのが、「市場連動型」と呼ばれる料金プランだ。これは電力の卸市場と連動して契約者の電気料金が定められるもので、電力価格が安定している分にはユーザーの電気料金が低く抑えられるが、ひとたび電力価格が上がると、基本的にはその高騰分が利用者の電気料金に転嫁されるという仕組みだ。

その電力価格は、JEPXこと日本卸電力取引所が運営する電力取引市場において日々変動しているが、実は昨年12月半ば頃からその価格がにわかに上昇。それまでは10円/kWhの水準で安定していたものが、現在では150円/kWhを超えるところまで高騰している。このため、市場連動型プランによる電気料金は急に跳ね上がり、前述したような「電気代1日5000円超え」「10万円コース」といったとんでもない状況になっているのだ。

このような“異常事態”に対して、市場連動型プランを採用する新電力各社は対応に追われている。CO2ゼロの自然エネルギー由来の電力を供給している電力サービス「ハチドリ電力」は、高騰分の電気料金をすべて自社で負担すると発表。また、同様に自然エネルギー100%の電力を供給する「自然電力」も、各地域の大手電力会社の電気料金を基準とし、それを超える分の電気料金について、3万円を上限として値引きするとしている。

これらの対応により、前述したような「電気代10万円超え」といった最悪の事態からは、多くのユーザーが避けられる公算となりそうな情勢。とはいえ上記の新電力各社にとっては、高騰分の料金を負担することでの損失はもちろんのこと、さらに今回の件によるイメージの低下も避けられず、大きなダメージとなることは必至だ。

奥の手を使うほど逼迫する電力不足

今回、電力価格が高騰した原因の主たるものとして挙げられているのが、発電燃料となる液化天然ガス(LNG)の在庫不足だ。

報道によると年間を通じては余剰しているというLNGだが、長期間貯蔵すると気化してしまうため、夏に余ったLNGを冬に使うといった運用ができないとのこと。さらに輸入ルートであるパナマ運河の通航遅れの影響、果ては豪州産の石炭を規制し資源不足に陥った中国が、昨年末からLNGを爆買いしているという説もあるなど、複合的な理由で供給が滞っており、この状況は当面は解消されない模様だ。

また原子力発電所がすべて停止している現状にくわえ、近年急速にその施設が増えた太陽光発電に関しても、このところの寒波でほとんど発電が期待できないということで、電力供給量がなかなか上がらないという。そこで発電事業者のJパワーは、停止中だった石炭火力発電施設を緊急的に重油を使って再稼働させるという、いわば“奥の手”を繰り出すことを決めるなど、ギリギリの対応が続いている。

このように、にわかに露になった日本の“電力危機”に対して、SNS上では「エネルギー・セキュリティの失敗」と、国によるエネルギー政策の失策を指摘する意見も多い。さらに国に対しては「電力非常事態宣言をした方がいい」という声もあがるなど、相当な危機感を抱く方も多い印象だ。

ひとりひとりの節電の心がけももちろん大切なことだが、実際問題としてその程度では到底追いつかないほどのレベルで逼迫していることが明らかになった日本の電力事情。今回の“電気代爆上がり騒動”を契機に、現実的視点に立った議論が今後巻き起こることも大いに考えられそうだ。

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