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五輪中止で困るのは米国とIOC。「女性蔑視」に世界激怒も決断できぬ裏事情=原彰宏

日本社会に根付くジェンダー差別

これを単なる森喜朗氏の失言問題に留めるものではありません。

日本社会、特にスポーツ界においてのジェンダー差別はひどいものがあり、これを機に、女性は黙っていないで大きな声をあげようというムーブメントになっています。

森喜朗氏に対する抗議に賛同する人をSNS上で呼びかけたところ、すでに12万筆も集まっています。

政府や組織委員会、都などに宛てて森氏の処遇の検討や再発防止を求める署名活動のことで、若者の政治参加やジェンダーについて発信してきた20~30代の女性たち中心に支持が集まり、「性差別を次の世代に引き継ぎたくない」という強い思いで、性別や世代を超えて広がっていきました。

「発言を撤回して謝罪すればいいわけではない」「看過するのは嫌だった」。署名を企画した有志の一人で、安全な避妊方法の普及を目指す「#なんでないのプロジェクト」代表の福田和子さんは行動を起こした理由をこう語っています。

福田さんは25歳の若い女性です。音楽家の坂本龍一さんら著名人も賛同人に名を連ねています。

今までじっと耐えてきた女性、森氏が言う「わきまえて」きた女性たちが、今こそ「わきまえない」ことを選択しようという強い思いが、こういった次世代に、ジェンダー差別を残さないために行動を起こしたのでしょう。

署名ではあえて「辞任」という言葉を使わず、会長職の処遇の検討や再発防止を求めています。さらに、五輪とパラリンピックに関わる組織で女性理事の割合を最低4割にするよう要求しています。

これだけ国際社会でジェンダー平等が重要だと認識されている中で、発言をした森会長だけでなく、容認した周囲も問題ただ形だけトップを代えればいいのではなく、具体的な対策を示してほしい。

若者に政治参加を勧める一般社団法人「NO YOUTH NO JAPAN」代表で慶応大学4年の能條桃子さんは、「森会長の発言は男性が優位と思っている点や、開き直ってそうした考えを表に出しても許されると思っていることが問題」としながら、「森会長個人の問題と捉えても何も変わらない。女性蔑視はいろいろな場所で起きている。発言をとがめなかった組織のあり方も考える必要がある」と指摘しています。

「発言がおかしいことを数で可視化したかった。今までは笑ってやり過ごしていたかもしれないが、その一言がこの時代にどれだけ重いか認識すべきだ」。昨年末に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画に若者の声を反映させる「#男女共同参画ってなんですかプロジェクト」代表の桜井彩乃さんはこう語ります。

女は黙って可愛くしておけばいい……これがいまの社会風潮なのでしょう。

今回のムーブメントの共通点は、こんなジェンダー差別は「自分たちの世代で終わらせたい」と思っている点にあるようです。

今の高齢者の考えを根本から変えることは無理と思わないで、常に声にあげていく、そして40~50歳代の男性が大きく変わることで、その子どもたちがジェンダーフリーが当たり前の世の中であると認識してもらう事が大事だと、エッセイストでラジオパートナーの小島慶子氏は語ります。

マスコミにも責任があります。「○○節」と、失言常習犯の発言をこう表現して、ある意味容認するような姿勢を見せてきました。石原節、麻生節などなどです。

はっきりと物を言うことが良いことではありません。この人は失言常習犯だから仕方がないという姿勢であれば、いつまでたっても、森氏のような発言はなくならないのですね。

世界では大問題、東京五輪は絶望的か

日本が許しても、世界が許さない。

ジェンダー平等を推進するはずの東京オリンピック組織委員会のトップである森喜朗氏による女性蔑視発言は、日本だけの問題ではなく、世界においても大きな問題発言となっています。

AFP通信では「性差別の論争に火をつけるリスクを冒した」「日本は男女平等の推進に依然遅れをとっている」と報じています。

カナダのIOC女性委員であるウィッケンハイザー氏は「朝食のビュッフェ会場でこの男を間違いなく追い詰めます。東京で会いましょう」と述べていますね。

海外では、女性アスリートの東京五輪ボイコット運動にまで発展しかねない状況になっています。決して森発言は、軽いものではありません。

というか、これで東京五輪不参加の良いきっかけになったとする動きもあります。

もともとコロナ禍ゆえ、表立って選手派遣をやめることは言えなかった国が、森氏発言をきっかけに五輪参加を取りやめるところが出てくるのではと言われています。

Next: 森氏発言が東京五輪中止の決定打に? 判断を下すのは誰か

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