女性蔑視発言が決定打となり、とうとう東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が辞任を決意しました。新会長は勇気をもって開催を中止すべきでしょう。すでに東京五輪の商業的価値とブランドは地に落ちており、強硬開催で得られる成果も驚くほど少なくなっています。(『今市的視点 IMAICHI POV』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市的視点 IMAICHI POV』2021年2月12日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
まだ五輪開催に価値はあるのか?
“女性蔑視”発言がとうとう決定的な仇になり、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長がようやく辞任を決意しました。
後任は問題を起こした森氏ご本人が元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏を指名したそうで、どこまで行っても国際社会から正当に評価されない状況が展開されています(※編注:原稿執筆時点2月12日 08:00。川淵氏は辞退の意向を固めたと報じられています)。
21世紀になっても日本はまだこんな国だったのかという、ある種の恥辱的側面を露わにしてしまったことで、東京五輪への国際的な開催期待も半減する状況となったのは明確。
そもそも五輪を実施する価値というものも、大幅に縮減してしまった感があります。
オリンピック・パラリンピックの理念は完全崩壊
IOCのオリンピック憲章では、その理念がうやうやしく書かれています。
「スポーツを文化、教育と融合させ、生き方の創造を探求するもの」と定め、その目的を
「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てること」と規定しています。
これを見ても、森前会長の江戸時代の封建社会を思わせるような性別蔑視の発言は、昨年米国を発端にして世界的に波及したBLM人種差別運動にも真向から対立するような動きと映ります。
その結果、いきなり世界を敵に回してしまったことは、重大な責任といえます。
ご本人は一部の問題発言をメディアに切り出されて叩かれ、自分は必死にがんばってきたのにひどく残念であると感じている様子。
そもそも発端となった「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」という発言からも、会議にあたっては事前に根回しに徹し、公式的な会議上では異論を出さないようにして決着をはかるのである、とした前時代的発想が見えます。
これはまったく国際社会で認められないもの。その根本的な問題を突きつけられているという状況も、森喜朗氏は理解できていないのでしょう。
国際社会のインサイトと森会長の立ち位置がひどく乖離していることを、あからさまにしてしまった感があります。
ここ数十年でかなり商業主義化してしまい、自国開催でも純粋には喜べない雰囲気を醸成しつつあるオリンピック。商業的に見ても、そのブランド力を自ら自滅的に破壊してしまった感が強く、ここから無理やり実施することの意義を見いだせる人は激減したことを感じる次第です。
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