NHKが映らないように加工したテレビでも、受信契約を結ぶ義務がある――。24日に東京高裁が下した判断に、疑問の声が広がっている。
報道によると、原告は受信料制度に批判的な考えを持つ東京都の女性で、2018年にNHKの放送信号を減退するフィルター、いわゆる「イラネッチケー」が付いたテレビを設置。NHKとの受信契約を結ぶ義務がないことの確認を求めるため、裁判を起こしたとのこと。
1審の東京地裁は20年6月、この訴えに対し「NHKの放送を受信できる設備に当たらない」と原告の訴えを認める判決を下したものの、それに対してNHK側は控訴していた。
今回の2審の判決では、原告側が「テレビを壊さずにフィルターを外すことはできない」と主張したものの、東京高裁の廣谷章雄裁判長は「電波を増幅するブースターを取り付けるなどすれば視聴は可能だ」とし、「加工により視聴できない状態が作り出されたとしても、機器を外したり機能させなくさせたりすることで受信できる場合は、受信契約を結ぶ義務を負う」と、一転して原告の請求が棄却される結果となった。
原告側は最高裁で争う構え
今回の2審判決に対しては、「イラネッチケー」の開発者として知られる情報工学者で筑波大学准教授の掛谷英紀氏も、自身のツイッターで反応している。
【報告】当方製作のNHKだけ映らないテレビの裁判は原告敗訴とのことです。原告弁護士から上告する意向と聞いております。報道によると、ブースター追加、工具により復元ができるのが理由とのことです。後者は技術的に反論し、前者はテレビ購入より高額になると主張しました。https://t.co/8aW31cLUIU
— Hideki Kakeya, Dr.Eng. (@hkakeya) February 24, 2021
それによると、原告の弁護士は上告する意向とのことで、今回の件は最高裁まで争われることになりそうとのこと。掛谷氏も今回の請求棄却に関して、ネット上で流布されているような「裁判官買収」といった陰謀論には与しないとしながらも、「エリート特有の事なかれ主義がこうした判決を生んでいるだけです」と、判決内容を痛烈に批判している。
実際ネット上でも、今回の判決に関しては「おかしい」と疑問の声が多くあがっており、なかには「そのうち電波が飛んでる以上、契約義務があるとかなりそう」といった声も。さらに今回の裁判を下した東京高裁の裁判長に対しても「迷惑な判例残すおかしな裁判長」など、批判的な意見が散見される。
いやこれおかしいやろw NHK写らないテレビでなんでNHKの受信契約せなあかんのw
— きゃっつ(Kats)⊿ (@grayengineer) February 24, 2021
NHK視聴できなくしたテレビに「受信契約義務」を認める判決…東京高裁、原告側逆転敗訴 #SmartNews
この判決理由には違和感がある。そのうち電波が飛んでる以上、契約義務があるとかなりそう https://t.co/POL6zrR5DD
— hase (@hase3desu) February 24, 2021
広谷章雄裁判長は来年11月に退官だそうです。退官前にトンデモ判決出して後に迷惑な判例残すおかしな裁判長のリスト化して欲しいです。報道の仕事って何なんですかね。 https://t.co/D5z4uXUIPt
— 画廊ねこ (@garouneko) February 25, 2021
「もうテレビなんて捨てよう」との声も
いっぽうで掛谷氏は、自身のツイートで「イラネッチケー」が開発された2014年当時と比較して、テレビを取り巻く環境が大きく変わったとも指摘している。要はネットにさえ繋げば、TVerやパラビといったサービスで民放の番組が、さらにNHKのネット配信も見られるので、もはやTVチューナーは無用の長物。このチューナさえなければ、今のところはNHKとの受信契約は不要となるのだ。
ネット上でも、どうにかして「NHKだけを見なくする方法」は無いものかと検討する人は多いようで、ソニー「ブラビア」のチューナー非搭載モデルを推す声、さらにはTVerなどの配信サービスをプリインストールしたモニターを、今後出してくれれば…といった意見も見られる。
NHKの電波弱くして受信できなくしてるのはアカンミタイ
ソニーのBZシリーズなら完全にNHK受信できない電波受信できないモニターでNHKが映らない「モニター向けTVer」搭載
dメニューニュース:視聴できぬテレビも契約義務=NHKが逆転勝訴―東京高裁(時事通信) https://t.co/QrV3d9r3Pg
— コレン@team【ROCKBEAST】 (@korentrb) February 25, 2021
nhkのアレ、TVerをプリインストールしたandroidTVなモニタをアイリスオーヤマあたりが売り出したらどうだろ
— 蔡蓮 (@psylien_i686) February 25, 2021
ただ、それ以上に多く見られるのが「もうテレビなんて捨てよう」という声。最近ではNetflixやHuluなどの定額制動画配信サービスが普及し、それらがオリジナルコンテンツまで精力的に作り出す状況とあって、もはやテレビ放送がなくても全く困らないと考える層は、どんどん拡大している状況だ。
NHKが映らないようになっているテレビでもブースターなどを付ければNHKを視聴できるようになるから受信料払えとさ。
みんなもテレビなんて有害な機械は捨てよう。視聴できぬテレビも契約義務 NHKが逆転勝訴―東京高裁:時事ドットコム https://t.co/zIENtP3QNI @jijicomより
— ttensan2nd (@ttensan2nd) February 24, 2021
NHKがスクランブル放送を導入する見込みは薄いので、NHKにお金を払いたくない人はとっととテレビを捨てた方が早いよね。
そこまでして見たい物でもあるんかねぇ。 https://t.co/bS9tERzpGx— HAMPER (@ryou1993_go) February 25, 2021
最近のNHKといえば、テレビ設置の届け出義務化案を打ち出すなど、受信料全世帯徴収さらにはネット利用者からの徴収も目指して、躍起に動いているところ。それだけに今回の「イラネッチケー」裁判も、NHKにとっては負けられないところであろうが、その必死さが昨今の「テレビ離れ」に拍車をかけているというのは、なんとも皮肉な話だ。
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