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バイデンが狙う「グレート・リセット」で格差定着。プーチン猛反発で米ロ衝突必至か=高島康司

世界の歪みを作った元凶が「グレート・リセット」を主導

これはつまり、限界にまで達した地球温暖化と環境破壊、そして社会の安全弁である中間層の没落と社会を不安定にする極端な格差拡大など、いま「グレート・リセット」で解決されるべき問題の対象とされている矛盾そのものを作ってきた張本人こそ、「CFR」や「ダボス会議」に結集している勢力であることを意味している。

端的にいえば「グレート・リセット」とは、彼らが推進してきたグローバル経済をリセットし、新たなグローバルな体制へと置き換える構想なのだ。

地球環境の配慮など、持続可能な資本主義のコンセプトにシフトすることなど評価される点も多い。しかし、基本的に「グレート・リセット」は、「第4次産業革命」の高度なITテクノロジーの導入による社会の新しい統治形態だと思われる。それは高度管理社会といってもよいようなものだ。

これを世界のどの地域にも適用可能なグローバルなシステムとして提案するのが、「グレート・リセット」の中身ではないだろうか? それは、民主主義と市場原理のように、世界のすべての地域で導入すべきユニバーサルな社会モデルであろう。

これを主張しているのが、現在のグローバリゼーションを推進してきた中心的な勢力なのである。

今度は彼らは、グローバルな資本主義体制を乗り越える新しい社会体制への転換を主張している。

すると「グレート・リセット」というのは、社会矛盾の爆発によって既存の支配勢力が民衆の怒りのターゲットとなり、自分たちが排除される前に、新しい社会状態を先行して導入し、支配勢力としての地位を継続して維持するために行っていることなのではないだろうか?

そのような疑念が出てきても不自然ではない。

プーチンの「ダボス会議」での批判

この疑念を端的に表現しているのが、ロシア大統領のプーチンだ。

今年の1月22日に行われた「ダボス会議」のオンラインスピーチでプーチンは以下のように述べ、「グレート・リセット」のアジェンダを進める勢力をやんわりとだが、的確に批判した。

まずプーチンは、新型コロナウイルスのパンデミックで、社会的格差が拡大して社会不安が広がり、多くの国が危機的な状況に追い込まれた事実を指摘した。だが、こうした問題を引き起こしたのはパンデミックではなく、アメリカが推進してきたグローバリゼーションであるとして、次のような批判を展開した。

「このようなグローバルな社会経済的な不均衡は、1980年代から続けられてきたドグマ的、ないしはがさつな政策の直接的な結果である。この政策はいわゆる『ワシントン・コンセンサス』の暗黙のルールに基づいている。これは規制緩和、ならびに富裕層と企業への減税を条件に民間の債務を増やし、経済成長を最優先した政策だ」

そして、現在の社会的不均衡は、実は新自由主義のグローバリゼーションが引き起こしたものであり、新型コロナウイルスのパンデミックはすでに存在している問題を拡大しただけだったと主張する。

「先に私が述べたように、新型コロナウイルスのパンデミックはこれらの問題を一層悪化させただけだった。昨年、世界経済は第2次世界大戦以降で最大の経済停滞を経験した。7月には、500万の仕事が労働市場から失われた。これはとれも大きく、そして憂慮すべき数字だ。昨年の9カ月間だけで、3.5兆ドルの収益が失われた。この数値はさらに拡大しており、それとともに社会的な緊張は高まっている」

プーチンは、現在どの国でも危機的な状態にまでなっている格差などの社会的不均衡の真の原因は、「ワシントン・コンセンサス」による際限のないグローバリゼーションであると指摘する。

「ワシントン・コンセンサス」とは、各国の規制を徹底的に緩和し、資本の移動と投資の自由を保証した新自由主義のルールである。これこそ、「世界政府」を樹立するカギとして「CFR」や「ダボス会議」が長い間推進してきた理念である。

このグローバリゼーションを推進した欧米の責任をプーチンは問い正したのだ。

Next: 再び米ロ緊張か。プーチンは「巨大IT企業」を強く批判

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