三重県鈴鹿市の交差点で発生した信号機の倒壊が、犬のおしっこが原因だったことが科捜研の調査によって判明し、大きな波紋が広がっている。
報道によると、信号機の鉄製柱が根元から突然倒れたのは今年2月のこと。幸い怪我人はいなかったものの、柱の耐用年数はおよそ50年だったのにも関わらず、設置から23年で倒れたということで、三重県警の科学捜査研究所が調査。その結果、倒れた信号機の柱の根元の地面から、同じ交差点にある別の信号機の42倍の尿素が、さらに信号機の柱からは、8倍近い尿素が検出されたという。
倒れた信号機の周辺は犬の散歩コースになっていたといい、また柱の素材や設置方法には問題がなかったことから、県警は犬の尿に含まれる塩分などが原因となって、腐食が通常よりも早く進んだ可能性が高いとみているという。
「おしっこは家で…」の提言に愛犬家が反発
三重県内のローカルな話題にもかかわらず、愛犬家などから大きな注目を集める形となったこのニュース。
とはいえ、過去には大阪府の池田市内の公園で、犬の尿によって腐食が進んでいた照明柱が倒れ、近くにいた女児が手に重傷を負うという事件が。さらに同じく大阪府の堺市でも、信号柱が犬の尿が原因と考えられる腐食で倒れ、自転車に乗ったまま信号柱に捕まっていた男子高校生が転倒し、打撲などの軽傷を負うという出来事があるなど、決して今回の出来事がレアなケースというわけではないようだ。
最近では、飼い犬がおしっこをしたところには水をかけ、ちょっとでも洗い流すようにするというマナーを心得ている飼い主が増えてはきているものの、とはいえ愛犬家からすれば、ワンちゃんがお散歩に出ておしっこをするのは、当たり前だろうというのが、偽らざる思いではないだろうか。
そんななか、今回の出来事を報じた記事では「犬が散歩中に外で排せつをしないことで、大きなストレスになったり病気になったりすることはありません」「散歩中ではなく自宅で排せつするようしつけることを勧めたい」という、とある動物病院の獣医のコメントを紹介。これに対して、愛犬家からは「無理なことを…」「どんなに家で排泄しても外に出たらマーキングの為にしちゃう」といった、反論の声が多くあがる事態となっている。
「自宅で排泄を」と無理なことを書くのが間違い。犬のし尿対策を施した鉄柱に取り替えればいい。
問題点と可能な対策を間違えてはいけない。
信号機倒壊の原因は “犬の尿” 県警科捜研調査 三重 鈴鹿 | NHKニュース https://t.co/0sO2553O5b
— 影向 YouGo 大和写真家™ (@yougonara) July 13, 2021
「散歩の前に排泄しろ」って…。犬の習性でどんなに家で排泄しても外に出たらマーキングの為にしちゃうから無理だよ。https://t.co/lYDxRLYL0X
— tupolev (@fetokyo) July 13, 2021
さらに愛犬家の間で広がっているのが、今回のニュースをきっかけに犬の散歩への反感が広がり、下手をすれば“マナー警察”による監視が始まるのでは、といった危惧。「愛犬家」と「犬嫌い」とが相容れないのは今に始まった話ではないが、コロナ禍以降に顕著となった互いに監視しあうといった風潮のなか、その対立が表面化することも考えられなくはなさそうである。
信号機倒壊の原因は “犬の尿” 県警科捜研調査 三重 鈴鹿 | NHKニュース
個人個人の対策は必要ですが、過剰反応して犬の散歩自体にクレームをつける人が出そうで怖いです。ルールやマナーを守って、ということであれば散歩自体には問題ないはず。 https://t.co/kjHTbkkSl1
— スサノヲ (@1bjnVVEJ7NejIGT) July 12, 2021
これを機に犬を散歩させている人には、マナー警察がねっとりした陰湿な目を向けられるんだろうなぁ。息苦しいなぁ。
— ターコイ (@tttttttt0102) July 13, 2021
「無電柱化」で一挙解決との声も、その道のりは遠い?
このように、犬の散歩中のおしっこの是非に関して議論が交わされるなか、今回の信号機とは厳密には異なるものの、一部からあがっているのが「無電柱化が進めば一挙解決では?」といった声である。
とっとと無電柱化しろ。犬に急かされるとかヒトとして恥ずかしくないのか???
信号機倒壊の原因は “犬の尿” 県警科捜研調査 三重 鈴鹿 | NHKニュース https://t.co/MOERS1Czvi
— すこんヴ🏳️🌈 (@tackco) July 12, 2021
人間が形骸化させた犬の本能を潰すより電柱地中化した方が早そう https://t.co/NAQ5lHF9ef
— らにあ🌈🕒⚗️ (@Lania_SMCsuki) July 13, 2021
今は五輪開催とコロナ対策でいっぱいいっぱいの小池百合子氏が、以前から取り組み、都知事選での公約のひとつにも挙げていた無電柱化。都道の無電柱化に関しては、以前だと2060年代までかかると言われていたが、今年2月に東京都は年間の整備規模を倍増するなどの施策で、当初の見込みを20年も前倒して2040年代に完了すると発表。さらに国レベルでも、今年5月に国土交通省が新たな「無電柱化推進計画」を策定するなど、その動きが加速化しつつある状況だ。
無電柱化のメリットとしては、道路や歩道の幅員が広がる、災害時の電線の垂れ下がりが防げる、街の景観がアップするなど数多挙げられるが、いっぽうで無電柱化を導入している地域とそうでない地域では、宅地価格にも差が出るケースもあるという話も。無電柱化している地域の宅地のほうが不動産鑑定上の観点から地価が高くなるうえに、価格下落率も低くなるといい、無電柱化に必要な費用を差し引いても、お釣りがくるとのことである。
しかし、このように良いことばかりのように見える無電柱化だが、それでも現状のところ遅々として進んでいないのは、やはりそのコストが大きなネックになっているからだ。ある記事によると、通常の電柱方式の場合、敷設費用は1キロメートル当たり約1,500万円なのに対し、地中化する電線共同溝方式だと同じ距離で1億6,000万円程度とほぼ10倍ほどのコスト。東京都のように首長自ら旗振りをして推進しているところならともかく、他の地方自治体からすると尻込みせざる得ないというのが正直なところのようだ。さらに地震が多い日本では、電柱方式よりも復旧が遅れるとされる地中電線は、そもそも向いていないのではという見方も根強い。
そのため現時点でも電柱は、宅地開発などに伴って年々約7万本ほど増えているのだとか。投資家にとっても、無電柱化関連銘柄の将来性については判断が分かれるところだ。ワンちゃんの目線からすれば、毎日の散歩でマーキングできる場所がどんどん増えるのは嬉しい限りかもしれないが、無電柱化を推し進めたい国、あるいは小池百合子氏にとっては、相当頭の痛い状況であることは間違いなさそうだ。
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