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異常に高い日本のコロナ検査陽性率、デルタ株70%超に政府はお手上げ?菅政権はどこで間違えたか=吉田繁治

感染力が強くなるとウイルスの毒性は下がるという一般則

デルタ株での朗報は「感染力が高いウイルスほど、一般に重症化と死亡率は低い」という傾向があることです(※筆者注:あくまで「一般的」な原則です。デルタ株での検証はまだありません)。

新型コロナウイルス(Covid-19)は、1か月に1回から2回、遺伝子のどこかが変異しています(疫学的なRNAの観察結果)。インフルエンザより、変異の頻度は低い。しかし1年に少なくとも12回は変異します。

変異とはウイルスの遺伝子の配列が変わって、別の性質を獲得することです(感染力の強化、または弱化;毒性の強化、または弱化)。怖いのは、ワクチンの効果を弱める変異です。デルタ株がこれです。

RNAのミスコピー(=これが突然変異)である変異は、毒性が弱化して人類との共存に至るまで続きます。実際、ヒトゲノム(人間の遺伝情報)の約45%が、「ウイルス」や「ウイルスのようなもの」で構成されていることはすでに示されているのです。
※参考:人間と共生する生き物?可能性未知数のウイルスの正体 | EMIRA(2018年10月15日配信)

<重症化率低下の理由>

東京では、新規感染が約4,000人超/日ですが、重症化率は低下しています。

(1)65歳以上の高齢者(3,617万人)への、2回目のワクチン接種率が74%(2,670万人)に上がって、感染数と重症化が抑制されていること
(2)感染力の高いデルタ株の毒性、がたぶん下がったこと
(3)重症化率が低い、20代・30代の感染者が多いこと

この3つの要因が重なって、重症化率(60歳以上で8.5%:死亡率5.7%:21年7月)の低下から、国民の危機への意識は軟化しています(※筆者注:危機意識低下の要因としては、オリンピックのTV観戦への熱中も、強く重なっています)。

人間の意識は、その時に関心のあるものを選択をします。対象分野は、ひとつに絞られます。Aが意識を占有すると、Bへの関心は薄れます。Aさんを好きになると、自然にBさんへの関心が薄れるのと同じです。五輪期間には競技の中継しか見ず、他のニュースの報道はあっても受け付けないという行動がこれです。

「パンとサーカス」を狙った菅首相

実際、菅首相と自民党が狙った五輪効果が、これです。首相にとっては、コロナ失政での支持率の低下を防ぐための五輪でしょう。

ローマの帝政の「パン(所得)とサーカス(関心の対象)」の方法が、その後の政治にも連綿と続いています。中国の共産党(CCP)独裁も、パンとサーカスで成立していることを幹部は知っています。世帯所得の成長が低下して、輸出が減って失業が増えると、共産党独裁は、旧ソ連のように危機になります。

デルタ株の少ない21年7月までは、60歳以上では、陽性者のうち、死亡率が5.7%(17人に1人)と高かった。2か月前、現在の新規陽性者(全国で1万人台/日)なら、国中がパニックになったでしょう。

<個人知と集合知>

パンデミックが社会の心理にもたらす恐怖心は、株価水準への心理と同じです。個人の意識とは違う「社会の集合知」がもたらす現象です。選挙での「風」と同じ性質のものです。

個人のコロナに対する心理と、社会のパンデミックは異なります。

日本の社会では、米欧より感染率の低いところに、集団的なパンデミックへの臨界点があります。

Next: 病院・病床を減らした政府の愚。コロナ失政は2020年に起きた

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