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菅さん退陣だけじゃない株高の理由。「誰が買っているか」から予想される上値余地は?=馬渕治好

<(2)誰が買ったのでしょうか?>

筆者は、投資家からの売買注文を受けているわけではありませんから、本当のところはわかりません。それは、証券会社などで、実際に投資家から買いや売りの注文を受託している人の方が、よほどわかると思います(ただ、そうした人たちも、自分の会社に来た注文くらいしか、実際には把握できていないでしょう)。

もちろん、相場付きからどういったタイプの投資家が買っているかは推察するようにはしていますし、1週間弱待てば、投資家別売買動向は公表されます。

ただ、種々のマスコミの報道を見ていると(報道しているマスコミも、投資家の売買動向がある程度わかる人に取材しているはずです)、まず、8/20(金)のザラ場にかけての日経平均の2万7,000円割れで、もっと日本株が崩れ落ちていくと見込んだ向きが、株価指数先物の売り持ちなどを増やしていたようです。そうした投資家が、株価の反発であわてて買い戻したとの観測があります(そうした買い戻しは、菅首相の出馬断念表明の数日前から行われていた、という報道も目にします)。

また別の報道では、CTA(Commodity Trading Advisor、商品投資顧問)の株価指数先物買いが、菅首相の辞任表明前から入っていた、というものも目にします(一部報道では、具体的に〇〇社の××さんが、そう述べていた、というものもあります)。

CTAは、商品先物のみならず、株式や債券なども含めて、運用を担う業者です(この後の「理解の種」もご覧ください)。このCTAで、トレンド追随の売買、つまり、たとえば日本株が上がると買い、下がると売る、という取引を行なう向きが多い、とされています。そうであるとすれば、日本の政治情勢が実態面で日本株を押し上げると判断したから買った、ということではなく、単に足元で日本株が上振れするから買いを入れ、それが株価をさらに押し上げた、ということに過ぎません。

まさに値段の動きだけで売買するという、「機械的な」先物買いであり、それと対比する意味合いで、普通の海外投資家のことを「人間の」投資家だと前述しました。

さらに別の報道をみると、「買いの中心は政治をキーワードに組み込んだプログラム取引とみられる」といったものがありました(9/3(金)付日本経済新聞電子版「「政権刷新=株買い」に歴史的リスク 90年代の再来懸念」)。つまり、ネット上のニュースを検索して政治に関した単語が増えると株を買う、というコンピュータプログラムがあって、それがまさに「機械的に」日本株を買い上げた、ということになります。

こうした諸報道が正しいとすると、先週日本株を買ったのは、先物売りの買い戻しと、日本株が上がったから買った、という取引、さらには単にニュースで政治に関する単語が増えたから買っただけ、という投資家たちだった、と推察されます。

こうした買いが長く持続するとは見込みにくいです。

<(3)一部の投資家が買っただけで、これほどまでに急速に日本の株価が上がるものなのでしょうか?>

今回の局面のみならず、近年の日本株は、一部の海外投資家などが買えば大きく上がり、売れば大きく下がる、ということがよくあります。このように、海外投資家に振り回されている状況から、筆者の友人の海外投資家からは「日本の株式市場って、新興国のようだよね」とよく言われます。

その背景には、日本の投資家(特に機関投資家)が、大きくは動かない、という面があると考えています。そのため、一部海外投資家が買ってきても売り向かわない、逆に一部海外投資家が売ってきても買い向かわない、ということになり、株価が振れていると解釈しています。

日本の機関投資家は、いつも大きく動かないわけではなく、他社が動けば動きます。つまり横並びです。大手の機関投資家は、サラリーマンのファンドマネージャーなので、仕方がないですね。他社に比べて自社の運用が大きく劣後すると左遷されるかもしれませんが、他社に比べて群を抜く運用をしても年収が倍になるわけでもないですから、当然横並びになります。ファンドマネージャー個人のせいではないです。

もちろんすべての機関投資家がこうした状況だ、というわけではなく、独立系の運用機関では、筋を通した運用をしているところも多いです。

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