格差社会を作り出した「新自由主義」
英国の「ゆりかごから墓場まで」についても、前回記事でご紹介しました。
「ゆりかごから墓場まで」は「英国病」と揶揄され、財政赤字拡大で慢性的な不況に見舞われました。米国ではスタグフレーション(景気悪化の中で起こるインフレ)に苦しみ、そのときに登場してくるのが新自由主義と呼ばれるものです。
・官から民へ
・規制緩和強化
レーガノミクスやサッチャーリズムについても解説しています。
この流れは、日本では中曽根内閣における国鉄民営化、電電公社、専売公社の民営化でした。
そして小泉内閣での郵政民営化から大規模な規制緩和へと進んでいき、安倍内閣では「アベノミクス」で、大胆な金融緩和政策が取られました。
金融緩和の流れは世界的に行われていたもので、安倍政権は、結局は金融緩和のみの政策にとどまりましたが、世界では大規模な財政出動がなされて、いまは、金融緩和見直し、場合によっては金融引締へと舵を回していこうとしています。
ここでも日本は、世界からは周回遅れの状態になっています。
副産物としての「格差拡大」
リーマン・ショック後の、あまりの経済疲弊状態からの脱却という大きな壁に立ち向かうために、今までの常識では考えられない、歴史上例のない大規模な金融緩和政策を取らざるを得なくなりました。
量的緩和という、金利調整ではない直接市場に資金を供給するという手段に舵を切りました。
しかもその供給量は、誰もが想像していない大きなものとなりました。
その異例とも取れる量的緩和政策、ある意味、金利でインフレを調整する中央銀行の敗北とも取れる手法を、ようやく見直すことができる段階にまで来たのです。
そうなると、新自由主義の副産物が強調されてきました。「格差の拡大」です。
いま欧米では、新自由主義の効果とされる「トリクルダウン(扶養者の富は自然と国全体に流れてくる)」はないということを認めだし、税制などの法律の見直しや社会構造見直しにより、富の再分配を行っていこうという流れができつつあります。
新自由主義的な政策で国民経済が回復した国は存在しない……IMFもこのことを認め、世界各国が、徐々に新自由主義に懐疑的な動きが出てきました。
ここでも日本は周回遅れです。ずっと安倍政権でアベノミクスを見直すことなく、新自由主義を貫いてきたのです。
ただ、米国においては、いまスタグフレーション懸念が強くなってきています。日本は同じ不況でも「デフレ」状態です。
スタグフレーションがキーワードで新自由主義に舵を切った世界経済ですが、これからどのように舵取りをしていくのか、その状況を見極めなければいけません。