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人気洋菓子店の違法残業「やりがい搾取」に批判殺到、夢見る若者たちが使い捨てにされる現実。「“修行”と労働法遵守の両立は不可能」との意見も

「小山ロール」で知られる人気の洋菓子店「パティシエ エス コヤマ」が、半数の社員らに対して労使協定で定めた上限(月100時間未満)を超える時間外労働を強いていたと判明。しかも、労働基準法違反による是正勧告を2度も受けていたことも分かり、批判の声が広がっている。

報道によると、2018年1月に洋菓子の製造や販売などを担う社員・契約社員約100人のうち、55人の時間外労働が「月100時間未満」の上限を超えていたと認定。さらに21年1月にも、48人が上限を超えたと認定され、それぞれ是正勧告を受けていた。

また、2度目の是正勧告を受けた社内調査では、一部の社員らに対する残業代の未払いも発覚。同社は「労働関係法令に対する認識が不足しており、取り組みが不十分でありましたことを重く受け止めております」とのコメントを出している。

過去には“エロゲの舞台”になったことも

「パティシエ エス コヤマ」は、世界的なチョコレートコンテストで最優秀賞に選ばれ、テレビ東京系『TVチャンピオン』などのテレビ出演でも知名度の高いパティシエの小山進氏が1999年に設立。先述の「小山ロール」は、1日に最高1,600本売れたこともあるなど、日本におけるロールケーキブームのきっかけともなった商品で、店の前には連日それを求めて大行列ができるほど。ちなみに、20年8月期の売上高は約18億6,000万円を誇るという。

しかし、過去にはその人気ぶりが思わぬ事態に発展したことも。兵庫県三田市にある店舗の外観が、あろうことか18禁アダルトゲームの舞台として無断で使われてしまい、ファンの間で“聖地巡礼”が行われる事態にまで発展したのだ。

この件だが、「イメージが損なわれかねない」と店側が猛抗議したのに対し、ゲーム制作側は無許可でモデルにしたことは認めたものの、店のロゴを消して石垣の色も変えるなどしているため「著作権の問題はない」と説明。ゲームやアニメなどの背景に描かれる建物の著作権をめぐる一大論争に発展するかと思われたが、結局は無用な争いを避けたかったであろうゲーム制作側が、指摘のあった背景画像をすべて差し替えることで、事態は収拾している。

このように洋菓子ファンはもとより、様々な筋からも著名な店だけあり、今回のブラックな内情の発覚に対して「(小山ロールの)中身はブラックロールだったとわ」「美味しいけどもう買うのやめとこ」などと、失望の声が多数。しかしその反面で、今回の報道があった当日も店の前は大行列だったという話もあり、店も店なら並ぶ方も並ぶ方……といった見方も多く見られる状況だ。

労働法を守っての“修行”は不可能?

若者の“やりがい”を逆手にとって劣悪な労働を強いるという、いわゆる「やりがい搾取」が大きな問題とされている昨今。ただ今回も件もそうだが、寿司店や日本料理店などをはじめとした飲食店では、入店してからしばらくは“修行”という名のもと、雀の涙ほどの給料で長時間の仕事を強いられるといったことが、依然として行われているのが現状だ。

そんな「やりがい搾取」といえば、飲食業界だけに限らず例えばアニメの制作現場に従事するアニメーター、さらに最近では飽和状態と言われて久しいアイドル界隈も、そういった状況という話も多く耳にするところ。先日も詐欺などの罪で逮捕されたアイドルグループSKE48の元メンバーの裁判が行われたが、詐欺グループでの報酬は13万円の固定給で成功報酬はなかったとのこと。詐欺行為に加担するのは許されないとしても、夢見る若者がイイように利用され、その後も低収入から抜け出せないという図式は、社会としても忌々しき問題であろう。

とはいえ飲食も含めた技術職に関しては、修行したい若者に対して労働関係法令を遵守しながら技術を伝えるというのは、実際のところ難しい面もかなりあるといい、「一日8時間労働で一人前の職人になるなんて、10年かかっても無理」との声も。さらに今回のような報道が出ることで、逆に修行をしたいという若者の場や機会を奪うことにもなるという指摘もある。

低賃金に疲弊する若者を救うことと、若者のやりがいを伸ばす環境を残すこととが、まさに真っ向からぶつかってしまうという、なんとも悲劇的な状況に陥っているのが現状のようだ。

Next: 「このニュースを見てヒヤッとしてるところもあるんじゃないかな」

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