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民事再生「サン宝石」にスポンサー決定も前途多難か。原料コスト増ほか続く苦境、「新レトロブームに乗れれば…」と再建へ向け応援の声多数

今年8月に民事再生法の適用を申請していた、子ども向けアクセサリーなどの販売を手がける「サン宝石」が、大阪市のカタログ通信販売事業者「聖和趣味の会」とスポンサー契約を締結することがわかった。

民事再生手続きの際、事業の再建にはスポンサー企業の支援が必要不可欠とされていたサン宝石。報道によると、今回そのスポンサーとなることが決まった「聖和趣味の会」は、婦人向けファッションや日用雑貨などを手掛けるカタログ通信「エプロン会」を運営するなど、カタログ通信販売に長年の実績があり、物流機能を統合するなどで合理化やコスト削減が見込めるという。

聖和趣味の会による経済的援助が貸付けや出資など、具体的にどのような形になるのかはまだ判明していないが、今後サン宝石は11月11日に再生計画案を裁判所に提出。12月には再生計画案の説明会、さらに債権者集会を開く予定だという。

かつてのファンが倒産危機に立ち上がった

1967年に創業したサン宝石は、その数年後に子ども向けアクセサリーなどの低価格な雑貨の通信販売を開始。高くても数百円程度という手ごろな値段で手に入るアイテムの数々は、主に女子小中学生の間で瞬く間に大人気となり、以降はそれが事業の柱となっていった。

特に2000年頃には、『りぼん』をはじめとした人気の女児向けの漫画雑誌に、積極的に広告を出稿することで、顧客数を急速に拡大。またその後は、独自キャラである「ほっぺちゃん」が大人気となり、その勢いに乗じて原宿など全国に直営店を構えるまでとなった。

ところが、折からの出版不況で雑誌の発行部数が大幅に減ったことで、サン宝石も雑誌広告経由での新規客の獲得が伸び悩む格好に。さらに100円ショップをはじめとして、安価なファンシー雑貨が購入できるショップが、全国各地にできたうえに、昨年からの新型コロナウイルスの影響も相まって、13年9月期に約42億円を計上していた売上高は、20年9月期には約4億9,100万円まで下落。このような急激な収益悪化によって資金繰りが限界に達し、民事再生法の適用を申請するに至ったという。

ところが、サン宝石が存続の危機に瀕していることが報じられたことで、立ち上がったのが、若かりし頃に同社のアイテムに目を輝かせた女性たち。Twitter上には窮地のサン宝石を救おうといった趣旨のツイートで溢れ、さらにサン宝石のECサイトには、大人買いを試みる人たちによるアクセスが集中。一時は、商品の購入ページも含めて、サイトの表示に時間がかかる状況にまでなったという。

さらにファンの間での支援の輪は広がり、事業継続を目指してのクラウドファンディングも行われることに。目標額は300万円で始められたが、その金額にはわずか1日で到達し、最終的には目標額の421%にあたる1,265万3,580円もの資金が集まる結果となった。

このような幅広い女性層による盛り上がり、いわばサン宝石の異様な愛されぶりが、民事再生法の適用申請から約2か月でスポンサーが決まり、事業再建に向けて一歩踏み出せたことにも繋がったと言えそうだ。

従来までのカタログ通販を今後も続ける方向か

ネット上では晴れてスポンサー企業が決まったサン宝石に対して、再び応援の声が溢れる状況となっているが、いっぽうでその前途はなかなかに多難ではないかという見方も。

スポンサー企業となった聖和趣味の会は、先述の通りカタログ通信を長らく手掛けている企業ということで、サン宝石としては今後も従来からのカタログによる通信販売に活路を見出したいとの意図が見て取れる。これは、サン宝石がクレジットカードなどを持たない女子小中学生をメインターゲットにした商売が故に、ネット通販をメインに据えることが難しいといった事情もあるようだ。

ただ、従来からのビジネスモデルを続けるにしても、新規客獲得に一役買っていた雑誌媒体はますます衰退していくいっぽう。また商売敵の100円ショップも、さらに店舗数を増やしているうえに、最近では商品のハイクオリティ化が進むなど、より幅広い品ぞろえが実現している状況で、そこに再びの実店舗展開というのも、かなり無謀そうである。

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さらに昨今、様々な業種が悩みの種としている原料コストの増大、また海外での人件費の増大も、海外の自社工場でアイテムの多くを生産していると、自社サイトでも説明しているサン宝石にとっては、今後とも避けては通れない問題だろう。

ただ、最近はいわゆるZ世代などの間で、使い捨てカメラやレコード、カセットといったアイテムが持て囃されるという「新レトロブーム」が起こっていることもあり、昭和後期〜平成初期生まれの女の子たちを夢中にさせたサン宝石のアイテムも、その流れに乗れれば……といった見方も。

最近では、サン宝石のアイテムをネットから購入したところ、社長からの心のこもった手紙が同封されていたことも話題になるなど、温かな話題を相次いで提供している同社だけに、茨の道とはいえなんとか事業再建を果たして欲しいところだ。

Next: 「復活してくれることを切に祈っている」

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