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ふるさと納税、上位20位までの自治体が全寄付の2割を独占。“特産品ガチャ”の成否が恩恵の多寡を左右か。金持ち優遇&中間業者が儲かる仕組みに批判の声

ふるさと納税による全国1,741市区町村の“収支”が、2020年度では約2割超の自治体で赤字となっていると、独自で調査を行った毎日新聞が伝えている。

赤字の自治体は全国で471あり、都道府県別では東京・埼玉・愛知・大阪・千葉・神奈川といった3大都市圏が上位を占め、この6都府県で全体の半分を占めるという。いっぽうで33道県が黒字となり、上位は北海道・鹿児島・宮崎という順だったという。

しかし、そのいっぽうで2020年度の寄付受け入れ額は、上位の20自治体だけで全体の2割を占めているといい、地方のなかでも大きな恩恵を受けているのは一部に限られるといったデータも出ているという。

一部の「勝ち組」自治体が恩恵を受ける歪な状況

2015年度に寄付の限度額引き上げや、「ワンストップ特例制度」の導入といった申請の簡略化が行われたことで利用者が大いに増え、さらに自治体間での“返礼品競争”もヒートアップしたことで、より注目度が高まった感のあるふるさと納税。

もともとは、都市部と地方の税収格差の是正や、地方活性化などを目的に創設されたふるさと納税だけに、都市部の自治体で赤字のところが多いというこの結果は、まさに狙い通りのもので、政策として成功しているといった見方もできそうである。

とはいえ、ふるさと納税による税金の流出が止まらない都市部も、ただ手をこまねいてみているだけではない模様。東京23区では、区民税の約5%にあたる計約531億円が今年度だけでも流出していると報じられているが、このところはコロナ禍により観光収入が激減し、地元産業への打撃が甚大とあって、遅ればせながら返礼品を充実させるところも出てきているようだ。

いっぽうで、赤字が込んでいる都市部と比べて、地方は黒字のところが多いという結果だが、とはいえ冒頭の記事内にもあったように、寄付受け入れ額の上位20自治体だけで寄付受入額全体の2割を占めるというのは、なんとも歪な状況。

ふるさと納税の返礼品を2017年に止めたことで話題になった所沢市の市長は、ことあるごとにメディアで「牛か魚がないと負け」と発言しているが、実際にふるさと納税サイトにある人気返礼品のランキングを見てみると、和牛・イクラ・ホタテ・カニなど、見事にそれらの品々がズラリと並ぶ。

和牛はともかくとして、海産物に関しては海がない自治体で用意するのはほぼ無理なわけで、そう考えるとふるさと納税での成功は、最近流行っている“親ガチャ”ならぬ“特産品ガチャ”に恵まれるかどうかという、まさに運次第のところが多分にあるようだ。

仲介サイト業者の中抜きを批判できないテレビメディア

今回の報道を受けて、ネット上ではふるさと納税そのものの是非が大いに語られる展開となっているが、否定的意見が掲げる問題点としては「あくまでも金持ち優遇の政策」「中間業者による中抜き(ピンはね)」といったところが批判の的となっているようだ。

なかには「富裕層向けカタログギフト」といった揶揄まで飛び出しているふるさと納税。寄付額が多い高額所得者ほどよい返礼品という恩恵を受けるというシステムに対しては、「それは当然では」という見方もあるいっぽうで、金持ちを優遇する政策だという見方も根強い。また低所得層はいくらふるさと納税を行っても、手続きの手間を考えればコスパはさほど良くないといった意見も。

また仲介サイトへの手数料などといった、中間業者が中抜きするシステムにも疑問の声はあがる。このところではGotoトラベルやイーツ、さらについ最近の給付金のクーポン支給もそうだが、やたら中間業者を噛ませて儲けさせる事業を政府はやりたがるが、ふるさと納税はその走りともいえる存在。本来なら自治体へ渡るべき税金が、中抜きによって目減りするというのは何ともおかしな話だが、そんな仲介サイトから大量のCMなどを出稿してもらっている故に、何ひとつ批判的なことが言えないテレビなどメディアの態度を憂う声も多い。

先述の通り、ふるさと納税においては“負け組”となっている東京23区だが、今年11月に住民税減収の際の補填策の拡充など、制度の改善を求める要望書を金子総務相に提出したとのこと。今のところは一部の自治体と中間業者、そしてお金持ちしか得をしないとの評価が多い同制度だけに、見直しを希望する動きが今後広がることは大いに考えられそうだ。

Next: 地方の活性化より、利用者の節税が主な目的に

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