ここ数年でよく街中で見かけるようになった「から揚げ専門店」だが、すでにその市場規模が1,200億円を超え、店舗数も3,100を超えていると報じられ、多くの人々を驚かせている。
取沙汰されているのは、ワタミ系列のから揚げ専門店である「から揚げの天才」で弁当メニューが好調で、販売を本格的に開始してから3か月間で12万食を売り上げたという記事。その文中で、とあるマーケット調査会社のデータとして、上記の市場規模などが紹介されているのだが、SNS上などではむしろそちらのほうに反応する声が多いようである。
実際、記事で取り上げられている「から揚げの天才」も、今年3月で店舗数を106店舗まで増やしているとのこと。さらに先述のマーケット調査会社は、から揚げ専門店の市場規模が22年度中には1,300億円にまで成長すると試算しているという。
新規開業へのハードルが低いから揚げ専門店
から揚げといえば、家でも作れる家庭料理の定番メニュー。しかしながら、油で揚げるという工程が当然発生するため、調理に少々手間がかかるうえに、揚げた後の油の処分も面倒、それに調理後の部屋の臭いも気になる……ということで、このところは外食の需要が増えているという。
いわゆる専門店といわれるから揚げのテイクアウト店は、2010年代序盤から全国的に増え始め、そこに大手外食チェーンも参入をし始め、現在のような活況に繋がっているようだ。
から揚げ店は個人で始めるといったケースでも、フライヤーなどの最低限の厨房機器を揃えれば開業できるといい、さらにテイクアウト店となれば店の広さもあまり問われないので、同じ立地でも一般的な飲食店と比べれば物件を安く借りれるなど、とにかく開業に至るまでの金銭的なハードルが低い。
さらにテイクアウトのから揚げ専門店であれば、開業にあたって「食品衛生責任者」の資格は必要なものの「調理師免許」は不必要と、その手のスキルの面でもハードルが低い。繁盛するかどうかは別の話だが、ぶっちゃけ料理の心得がほとんどなくても、多少の資金があれば始めることができるというのだ。
実際、これらとほぼ同じような理由で、お隣の韓国ではかなり以前よりいわゆる“チキン屋”が多いのだという。若者の就職事情が異常に悪化している韓国では、公務員や有名企業など安定した職に就けるのは一握りで、そこからあぶれてしまった層が食っていくために仕方なしにチキン屋を開業するといい、現地では「チキン屋か餓死か」という言葉もあるのだとか。
ちなみに、そんな韓国におけるチキン店の数だが、コロナ禍に突入した2020年のデータによると2万7,667店も存在するといい、前年と比べると1,980店増えているという。日本のほぼ半分ぐらいの人口である韓国で、それだけのチキン店が存在するのであれば、日本のから揚げ専門店3,100店舗という数字も、まだまだ伸びる余地はありそうな気もしなくはない。
ブラジル産鶏肉は1か月で卸値が約2割上昇
ただ、そんなから揚げ専門店にもここに来て逆風が吹いており、なかでも大きいのがやはり原材料の高騰。国内の輸入鶏肉の7割を占め、外食産業で使われることの多いブラジル産鶏肉だが、ウクライナ危機が長期化している影響もあり、今年3月の1か月間で卸値が約2割上昇。約10年8カ月ぶりの高値を付けているというのだ。
また、韓国のチキン屋の数と比べれば少ない日本のから揚げ専門店の軒数だが、とはいってもワタミによる「から揚げの天才」やすかいらーくグループの「から好し」など、大手飲食チェーンがこぞって参入している状況となれば、個人店や小規模チェーンも含めてのサバイバル競争が今後さらに激化するのは火を見るより明らか。しかも先述の韓国のチキン屋チェーンも、ここに来て日本への出店攻勢を強めているといい、さらなるカオス状態に陥る可能性も大いにありそうである。
SNS上では、昨今のから揚げ専門店の隆盛を「韓国と同じ道を辿っている」と、韓国のチキン店になぞらえる声も少なくないいっぽう、から揚げ専門店の今後に関しては「高級食パンやタピオカと同じ道を辿る」といった悲観的な見方が多い印象だ。
【経済】日本でから揚げ専門店が急拡大 市場規模は1200億円突破、店舗数は3100を超える https://t.co/LZx2QHmQtF
日本でから揚げ専門店が急拡大市場規模は1200億円突破、店舗数は3100を超える | 韓国のことバカにしてたら日本も同じことになって草 https://t.co/Qdm6ws7oEV— ヤニっ子メグちゃん🚬【慢性会社行きたくない病症候群】 (@42_yanikko_8) March 31, 2022
タピオカが死んでからあげ専門店になり高級食パン屋になりみんな死んで行った。国破れて山河あり。
— カノウ (@kanouuu_katana) January 30, 2022
高級食パン屋のみならず唐揚げ屋もこんな感じのネーミングなのね… https://t.co/JwCq3DDVYH
— うえお🌵💙💛🕊 (@honestyueo) March 31, 2022
現に最近では、から揚げ専門店のなかでも“変わった名前の店”が出ているとの指摘も。他店との差別化に躍起といったところなのだが、実は高級食パンブームの際も、この手のネーミングの店が続々と登場するも、その後大量閉店してしまったという出来事があり、非常に危険な兆候ともいえそうなのだ。
近年のコロナ禍によって、一層勢いを増した感がある「から揚げ専門店」。感染者数の状況は、まだまだ予断を許さない状況が続くものの、以前のような日常が徐々に戻りつつある今後こそ、その正念場なのかもしれない。
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