ゼロコロナ、戦乱、労働市場構造の変化…不確定要素が次々と発生
インフレ高進のベースとなっている世界的な政策需要はここから漸次縮小してゆきますが、その一方で、さらに当局の判断を悩ませる不確定要素が続きました。
1つがコロナ・パンデミックによって労働市場の構造が変わってしまったことです。米国では雇用水準がコロナ前よりまだ何百万人も少ない段階で、すでに人手不足の賃金圧力がかかり、新たなインフレ圧力になりました。
この1-3月は労働生産性が前期比7.5%も低下するなかで賃金は大きく上昇しているため、単位労働コスト(ULC)は前期比11.6%も上昇しています。従来CPIの変動に最も大きな影響を及ぼすと考えられているULCがこれほど大きく上昇すれば、米国にホームメード・インフレをもたらす要素となります。
そしてこの2月にはロシアがウクライナに侵攻して、資源価格や穀物価格が一段と高騰しました。資源や穀物の一大供給国が戦乱の下にあり、そこからの供給が大きく減少する懸念があり、この戦乱がいつどのような形で終息するのか、目途が立ちません。EUがロシア産原油の禁輸に向かっているため、さらに原油相場を押し上げています。
また中国がゼロコロナ政策に拘泥し、上海や北京などの大都市も含めた制限を課しているため、中国からの部品供給や製造加工に依存するところは大きな打撃となり、主要国の生産活動を制約しています。北京政府はゼロコロナ政策をやめる意図はないようで、コロナの終息もめどが立ちません。
米国景気の行方がカギ
その中でFRB中心のインフレ抑制策でインフレが緩和の方向を見せるのか、従ってFRBの引き締めに終了の目途が立つのか、大きなカギを握るのが米国の経済そのものとなります。
ユーロ圏はインフレが加速しているものの、ユーロ圏経済が過熱しているためではなく、ロシアの蛮行もあってエネルギー価格や穀物価格が高騰しているためとして、引き締め策に消極的なためです。
資源高はウクライナ前から生じているもので、主要国の需要追加が大きく寄与しているのですが、今回のインフレに対して積極的に動いているのは米国と英国くらいです。
特に米国では賃金コストの圧力も高まっています。このため、インフレ抑制、従ってFRBがどこで引き締めを終わらせるかの判断には、インフレ圧力を緩和するほどに米国の景気、労働需要が十分減速するかどうかにかかっています。
1Qの米国成長率が1.4%のマイナスとなったこともあり、米国内には景気予想を下方修正する動きがあります。
しかし、1Qのマイナス成長は輸出の減少、輸入の増加、在庫の減少によるもので、これらはFRBの引き締めとはほとんど無関係です。国内需要は消費も設備投資も堅調です。
そして景気先行指数は依然米国経済の拡大持続を示唆しています。