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「ウクライナ勝ち確」は本当か?日本メディアが報じない、海外専門家3名が語る戦況=高島康司

「ロシアは目的を達成」ジャック・ボーとスコット・リッターの分析

最初にポーとリッターの分析を紹介する。

ちなみにジャック・ボーは、5月12日にネットラジオの1時間半に及ぶ長いインタビューに応え、詳細な戦況分析を展開した。またリッターは、5月の初旬に複数のメディアに掲載した記事で分析を提供している。

ニュアンスの違いはあるもの、2人とも基本的に同じこと言っているので、内容をまとめた。以下である。

・ロシア軍は首都キーウの攻略に失敗したことを根拠にロシアは敗北したとする報道がほとんどだが、これはロシア軍の基本戦術の無理解から生じた誤った判断だ。

・2月24日、ロシア軍はベラルーシ国境の北部、ドンバス地方の東部、そしてクリミア半島の南部からウクライナに侵攻したが、その目的はウクライナ全土の掌握ではない。目的はあくまでも、
1. 東部のドネツクとルハンスクの2州の全面的な掌握
2. ウクライナの非ナチ化
3. ウクライナ軍の弱体化
の3つである。

・ロシア軍の北部と南部への侵攻は、ウクライナ軍をこれらの地域に分散させ、ロシアの本来の狙いである東部2州への兵力集中を防ぐためである。

・また、南部オデッサもロシア軍は散発的に攻撃しているが、本気であるようには見えない。クリミアには独自の水源がない。ウクライナのヘルソンから水を供給している。いまヘルソンはロシア軍が掌握した。オデッサへの攻撃は、やはりウクライナ軍がヘルソン奪還のために兵力を集中しないようにさせるのが目的ではないのか?

・ウクライナ軍を分散化させるという目的は、特に首都、キーウの侵攻では際立っていた。キーウの侵攻と占拠は、もともとロシアの目的にはない。ロシア軍はキーウに22大隊、約2,200人で侵攻し、周辺地域を占拠した。これでウクライナ軍はキーウ防衛のため軍を配備せざるを得なくなり、東部への軍の集中はできなくなった。ちなみにロシア軍は、東部に65大隊で侵攻している。

・しかし、ロシア軍のもミスも犯している。2003年の大量破壊兵器があるとしてイラクの攻撃にアメリカは踏み切ったが、これは「CIA」から上がって来る大量破壊兵器をイラクは保有していないという情報の無視が原因だった。

・これと同じようなことがウクライナ侵攻でも起こった。最新兵器を配備しているウクライナ軍の強さの情報を、軍やプーチンが無視した可能性がある。これがロシア軍の前進するスピードが遅く、停滞しているように見える原因だ。

・しかし、時間をかけながらもロシア軍は目的を確実に実現しつつある。まずウクライナの非ナチ化という目標だが、これは実現したと見てよい。ロシア軍は東部の主要都市、マリウポリの占拠にこだわったのは、この都市がネオナチの極右、「アゾフ大隊」の司令部があったからだ。

・マリウポリの占拠で「アゾフ大隊」を「アゾフスターリ製鉄所」に追い込んだ。これで「アゾフ大隊」は実質的に壊滅した。ウクライナにおけるネオナチの影響力は大幅に小さくなるはずだ。

・いまロシア軍は、東部、ルハンスクとドネツクの2州の占拠に全力をあげている。時間をかけながらも占領する領域は拡大し、最終的には目的を達成すると思われる。

・ところでこの戦争は、NATOとウクライナが2019年から仕掛けていたものだ。これは、ゼレンスキー大統領の顧問であるオレクシイ・アレストビッチが、2019年にウクライナのテレビ局が行ったインタビューから明らかだ。ロシアははめられたのだ。

以上のように、ポーとリッターは戦況を分析している。

要するに、計画通りに進んでいるとは必ずしも言えないが、ロシア軍は確実に当初の目的を実現しつつあるということだ。

ということでは、日本や欧米の主要メディアが報じているように、ウクライナの勝利が確定したとまでは言い切れない。

Next: ロシアは「ウクライナをNATOに加盟させる作戦」に嵌められた?

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