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バイデン政権、異例の大幅利上げで景気後退のほかにも大きな代償。日本はインフレ加速に耐えられるか?=斎藤満

ガソリン価格下げの代償

インフレ終息の目途が立たないどころか、米国では国民生活に欠かせないガソリン価格が「危機ライン」と言われたガロン4ドルを超え、6月には5ドルに達しました。ニューヨーク州では6ドルに、カリフォルニアでは8ドルといった高価格も見られるようになりました。これから車で動くシーズンに入り、このガソリン高は政権にも大きな圧力になります。

そこでバイデン政権は重い腰をあげました。ホワイトハウスはバイデン大統領が7月13日から、サウジアラビア、イスラエルを含む中東歴訪に出ると発表。バイデン大統領はこの計画にあまり乗り気ではありませんでした。大統領就任前、サウジ人の記者カショギ氏が殺害された際、バイデン大統領はサウジのムハンマド皇太子がこの殺害に関与していると非難していました。

この一件もあって、サウジと米国の関係は悪化していました。そこへサウジのサルマン国王から、両国の関係改善を図る観点から、バイデン大統領を招待したと言います。もっとも、高齢のサルマン国王に代わって、実際にはムハンマド皇太子が実権を握っているので、バイデン大統領はムハンマド皇太子と会談せざるを得なくなります。どんな顔をして両者が会うのか見ものです。

バイデン大統領としてはサウジに原油増産を依頼したいところ。もともと国営サウジ・アラムコは、米国ロックフェラー・ファミリーの一角、SOCAL(スタンダード・オイル・カリフォネニア、後のシェブロン石油)で、これをサウジに譲渡した経緯があります。

従って米国としては、原油生産については米国の意向に協力してもらえる、との期待があります。

ところが、ムハンマド皇太子は最近、ロシアのプーチン大統領と近くなり、サウジが原油の増産に走れば、原油価格が下落してロシアに打撃となることを憂慮します。ウクライナ戦争を戦うプーチン大統領に不利になるような原油価格下落策は簡単にはとれません。

従って、バイデン大統領の期待通りにサウジが増産して原油需給を緩和することは容易ではありません。

またトランプ政権時代にトランプ氏の娘婿、クシュナー氏がイスラエル、サウジとの関係を強めています。トランプ氏とサウジ、イスラエルの関係は良好になったのに対し、トランプ氏の政敵となるバイデン大統領にサウジが協力すると言っても限度があります。

しかもバイデン大統領はサウジ、イスラエル訪問もあって、イランとの核協議を半ばあきらめる形になりました。イランと相対立するイスラエル、サウジに対して、どちらともうまくやるわけにはいきません。イスラエル、サウジを立てれば、イランを切るしかありません。

当初はイランとの核協議を進めて制裁を緩和し、イランの石油増産に期待したのですが、そのルートはあきらめざるを得なくなりました。

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