FRBは15日、およそ27年半ぶりという0.75%の大幅利上げを発表しました。その結果、今年の成長率を従来の2.8%から1.7%に引き下げ、24年の失業率を3.6%から4.1%に引き上げました。インフレ対応で後手に回った代償が極めて大きくなっています。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2022年6月17日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
異例の大幅利上げに踏み切ったバイデン政権
FRBは15日、政策金利を94年秋以来という0.75%引き上げ、さらに年末の予想金利も3.4%に引き上げました。
その結果、今年の成長率を従来の2.8%から1.7%に引き下げ、24年の失業率を3.6%から4.1%に引き上げました。
インフレ対応で後手に回った代償が極めて大きくなりました。8.6%のCPIを目標の2%に抑え込むためには、かつてない大きな代償が求められます。
バイデン政権はどんな代償なら許容できるのでしょうか。
海外インフレを国内景気で冷やす非効率
まず、米国にとって不幸なことは、米国のインフレの原因が米国にあって米国が対応すれば収まる、というものではないことです。
つまり、コロナ禍で世界が金融財政総動員で需要を追加したことで、資源や穀物などを中心に世界インフレが生じました。従って、その原因となった積極財政、大規模緩和を、主要国が一斉に修正すべきものでした。
ところが、いざ世界のインフレが高まっても、日本や欧州は経済がまだコロナ前を回復していないこともあり、その抑制に消極的です。
その分、米国が必要以上に需要抑制をせねばなりません。その米国も長年低すぎるインフレを経験したために2%超のインフレも許容したうえに、バイデン政権がFRBの正副議長の任命を遅らせたために、FRBのインフレ対応も遅れてしまいました。
米国の労働市場がタイトで、賃金圧力によるホームメードのインフレ要素も出てきましたが、主因は原油などの資源価格高、穀物の価格高などで、これにウクライナ戦争、中国のサプライチェーン混乱などが重なり、本来なら国際協調でインフレ抑制を進める必要があります。それを米国が自らの需要抑制で需給緩和を図れば、米国の経済犠牲がそれだけ大きくなります。
実際、テーパリングから金利引き上げ、量的引き締めへと米国は矢継ぎ早に対応していますが、まだ高騰したインフレを冷やすめどはたっていません。
この先、FRBの金融引き締めだけでなく、政府は財政も抑制的にして需要を抑える必要が認識されています。世界の需要減を米国が一手に引き受ければ、米国経済は景気後退のリスクが大きくなります。