黒田円安と物価高対策
為替市場には「黒田円安」が意識されています。
財務省が敢えてドル売り円買い介入を行いましたが、黒田総裁は22日の総裁会見で、為替介入に関して質問され、円買い介入は金融市場のひっ迫要因で、不胎化しないと金利上昇になると指摘されましたが、これに対して「YCC(イールドカーブ・コントロール)がこれを吸収する」と答えました。
これは介入を不胎化することになり、それだけ介入効果を減殺します。
介入した政府財務省からすれば、日銀が自ら介入効果を減殺することをよく思うわけがありません。為替介入してまで円安を抑えたい政府に対して、金利上昇を何としても阻止したい日銀の思惑がぶつかるわけで、これに不満を持てば、財務省がYCCや指値オペに注文を付ける可能性があります。
特に、この臨時国会で提示する物価高対策は、ガソリン高補助、電気代補助など、財政コストがかかるものが多く、財務省としては物価高を助長する円安や、そのもとになる日銀のYCCを放置できない面があります。
これが高じると、政府から日銀の金融政策に注文、ないし圧力がかかる可能性があります。
またこの臨時国会の中で、岸田総理が解散総選挙に打って出る可能性もあり、その結果によっては日銀総裁人事にも手を付ける可能性が出てきます。
政府の意向を尊重する人物を新総裁とすべく、黒田総裁に圧力をかけ、辞任に追い込む事態となれば、「黒田円安」部分が大きいだけに、反動としての円高が大きく進む可能性があります。
来年春の任期前に動く
もっとも、黒田日銀総裁の任期が来年春と、半年に迫ってきたので、岸田政権も今敢えて総裁人事に動かない可能性もあります。その場合、「黒田円安」はしばらく持ち越すことになります。
それでも来年4月の任期前に、市場は「黒田円安」の手じまいに出る可能性が高いと見られます。
そもそも「黒田円安」がどのくらいあるのか、昨年時点で市場では「総裁が変われば10円以上円高になる」と言われていました。
その後黒田総裁の発言などを機に、一段と円安が進んだので、この「黒田円安」はさらに拡大していると見られます。その場合、総裁交代がもたらす円高リスクが大きいだけに、市場は総裁の任期前に保有するドルを売り戻すはずで、その動きは早ければ年明けにも出る可能性があります。