fbpx

日本の脱炭素で儲かるのは中国企業だけ。グレタさん原発“擁護”発言で世界のエネルギー政策に変化の兆しも=原彰宏

原発は「脱炭素エネルギー」に含まれるのか?

1つの側面だけで意見を発することの危険性を知るべきでしょう。

CO2を出させない。だからと言って、一気に脱炭素に舵を切ることによる足元の経済への影響も考えるべきところもあります。

経済無視と活動家は言いたいでしょうが、世界との関係を考えればそうもいかないでしょう。

日本でも原発再稼働は大きなテーマであり、いつの間にか新設・増設の話にまで発展しています。1基を動かせば、なし崩しにすべてを動かす……この国は本当に、政府に対しての信用がないのですね。

「脱炭素エネルギー」の範疇に、原発は含まれるのかどうかは意見の分かれるところです。

欧州連合(EU)の行政を担う欧州委員会は、脱炭素社会の実現に向けて原子力発電を地球温暖化対策に役立つエネルギー源だと位置づけると正式に決めました。

EU内でも、原発などに異論が出て、信号の黄色のような新分類を設けるべきだとの提案もあったようですが、欧州委員会は今回、過渡期の対応だとして理解を求めたとされています。

原発については、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)処分場の具体的な計画づくりなどを要件としました。また、新増設は45年まで、運転延長は40年までに各国の規制当局の認可を得る案件が対象となります。

グレタ・トゥーンベリさんの発言は、この欧州委員会の決定を受けてのことと、グレタ支持者の弁ではあります。

日本では、岸田総理、西村経済産業大臣、経団連十倉会長出席の「GX=グリーントランスフォーメーション実行会議」において、電力の需給がひっ迫する状況やエネルギー安全保障に対応するため、これまでに再稼働した原発10基に加え、来年の夏以降、追加で7基の再稼働を目指す方針を確認しました。

政府がこの10基に加えて再稼働を目指す方針の7基は、以下の通りです。

宮城県の「東北電力女川原発」2号機
新潟県の「東京電力柏崎刈羽原発」6号機・7号機
茨城県の「日本原子力発電の東海第二原発」
福井県の「関西電力高浜原発」1号機・2号機
島根県の「中国電力島根原発」2号機

この7基はいずれも、規制委員会の審査に合格しています。

日本の「脱炭素」目標は適切か?

日本では、2030年には温室効果ガス排出量を2013年比で46%削減、2050年に完全なカーボンニュートラルを実現することを目標に定めています。

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を等しくすることで、実質的な排出量をゼロにする状態のことで、日本は、2030年目標数値を、さらに50%の高みにまで引き上げることとしています。

この数字は、2021年10月に新たに閣議決定された内容で、2016年にパリ協定の採択にともなって制定されていたものよりもさらに厳しい削減基準が設けられているものです。

さらに、2020年10月に行われた菅義偉総理所信表明演説で、「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」と述べました。

この宣言が伝えていることは2つ。

1つは、カーボンニュートラルはCO2だけでなく、メタン、N2O(一酸化二窒素)、フロンガスを含むということを宣言していること。それが「温室効果ガス」というキーワードに含まれます。

もう1つの重要なセリフが「排出を全体としてゼロにする」という表現です。

Next: CO2「全体としてゼロに」の真意は?エネルギー政策の岐路に立っている

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー