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「要介護2」は本当に“軽度高齢者”か?介護保険から締め出し、地方自治体任せへ。厚労省ではなく財務省が決めるワケ=原彰宏

財務省財政制度審議会が決定?

財務省財政制度審議会とは、どんな組織なのでしょうか。

財務省設置法6条に基づき、2001年(平成13)1月に設置された財務大臣の諮問機関で、前身は、1950年(昭和25)に設立された旧大蔵大臣の諮問機関であった財政制度審議会。中央省庁再編に伴い審議会も統合再編され、財政制度審議会はじめ、資金運用・たばこ事業等・国有財産などの審議会が統合されて、財政制度等審議会になった。

※参考:財政制度等審議会とは – コトバンク

財務省財政制度審議会から出てきた話として、「要介護者1・2」を「軽度者」としたのです。

財務省いわく、地域の実情に合わせた多様なサービスをするには地方自治体が適しているとして、「要介護1・2」を全国一律の介護保険制度の適用外としたと説明しています。

この地方自治体が地域連携で行うのが「地域支援事業」になるそうです。

地域支援事業は、要支援や要介護になるおそれのある高齢者に対して、介護予防のためのサービスが地域包括から提供される事業のことです。

介護保険と地域支援事業に関しては、厚生労働省のPDFにその説明があります。
https://www.mhlw.go.jp/jigyo_shiwake/dl/h30_jigyou02a_day2.pdf

「要介護1・2」の介護者を地方自治体にサービスを任すというもので、そうなるとお金の“出どころ”は地方自治体になります。

「財務省財政制度審議会は介護実態を把握していない」

「財務省財政制度審議会は介護実態を把握していない」……そんな批判が、現場から出ています。

「そもそも要介護の人を軽度者としてくくって要支援者と一緒に地域支援事業へ移行させる
のが望ましいのかどうなのか、根本的な問題もございます」こう指摘をしたのは、全国老人福祉施設協議会の小泉副会長・業務執行理事の発言です。

発言の場所は、厚生労働省介護保険部会(9月26日)でのこと。今回の「要介護1・2」を介護保険制度から除外することに対して紛糾した部会となっていて、その議事録がネットで公開されています。
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001003533.pdf

小泉さんの発言は「P15」に記載されています。ぜひお読みください。発言には、「要介護1・2」の訪問介護・通所介護を地域支援事業に移行することは、専門性の乏しいケアで対応することになると、小泉さんの発言にはあります。

特に認知症の例を取り上げて、厚労省HPにもあるように、症状と介護認定が合致しないことがあり、認知症ケアにおいては重大な機能低下を起こす可能性が高くなると指摘しています。地域支援事業受託者に「要介護1・2」の訪問介護・通所介護を行う力量は未知数……とも指摘しています。

つまり、地方財政の具合によるサービスの不均衡が生まれ、場合によっては、必要なケアができなくなるということです。

介護保険を取り巻く環境としては、たしかに高齢化が進むにつれて介護費用も増加傾向にあり、介護給付費の総額は、介護保険制度創設時から約3倍にまで膨れ上がっています。

団塊世代が全員75歳以上となる2025年には、介護ニーズがますます高まって介護費用もさらに増加することが予想されています。

2025年以降は、介護保険料を負担する40歳以上の被保険者の人口が減っていくことから、どのようにして財源を確保するかが課題となるのもよくわかります。

高度成長期の、右肩上がりの高度経済成長期や“産めよ増やせよ”の人口増の時代では、保険制度が効率的であったことは理解できますが、全てが停滞横ばいになった低成長、むしろ衰退していく日本において、社会保障という国民のセーフティネットを保険制度にしておくことのデメリットは、どう考えればよいのでしょうか。

資本主義を考え直すのであれば、国家がなすべきことと市場主義に任せることのバランスを議論すべきではないでしょうかね。

私が懸念した保険制度維持の問題、つまり、少子高齢化が進むことで疲弊していくことは誰の目にも明らかなのに、政府はずっと放置してきました。むしろ、スタート段階で急がずに税制度を検討すべきだったのではないかとも思ってしまいます。これは私の私的意見です。

Next: 進まぬ少子高齢化対策。選挙が社会保障制度議論の妨げになっている

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