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「要介護2」は本当に“軽度高齢者”か?介護保険から締め出し、地方自治体任せへ。厚労省ではなく財務省が決めるワケ=原彰宏

選挙が社会保障制度議論の妨げになっている

財源確保の方策として、介護保険料の引き上げや納付開始年齢の引き下げ、利用者負担額2~3割の対象者拡大などが考えられますが、どれも国民の反発を招くことが予想されます。

特に選挙があるときは、与党としては議題にあげづらい内容です。それが社会保障制度改革を、何もせずに放置してきた最大の要因となっています。

学級委員のように、毎年総理は変わっていましたからね。総理特権の衆議院解散権も、考え直すべきではないでしょうかね。選挙が怖かったら、じっくりと重要な物事は議論できませんよね。

介護に限らず医療においても、保険制度維持のために給付を減らす「予防・未病」に力を入れています。

介護においても期待されているのが「介護予防の強化」です。介護予防を強化することで要介護となる高齢者を出さない対策も考える必要があるのは理解できます。

それだけでは不十分だとして、財政面で財務省が介護保険のスリム化を主張しています。少子高齢化のスピードを考えると“時間がない”のでしょう。

そう考えると、ここまで政府が少子化対策を何もしてこなかったことが恨まれます。戦後最大の長期政権だったのにね。

介護を取り巻く大きな社会問題

多くの現場の方が指摘していますが、介護は机上の数字だけで決めるものではありません。単純に「軽度」で区別するのはおかしいという意見も多数あります。

特に認知症に関しては、高齢者ほど専門家が必要とされています。

進行前のケアが大事……「要支援1・2」を「軽度」として介護保険の枠から外すことが、進行防止のケアにつながるのでしょうか。

また、「軽度」の範疇を拡大して介護保険制度から外して地方自治体に委ねることで、家族への負担が増えはしないか懸念されます。

認知症症状を抱えた高齢者を自宅で介護することの負担は、とても大変です。

過重な介護負担、介護殺人、ヤングケアラー、介護心中……いま介護をめぐる様々なものは、大きな社会問題となっています。

財務省は、この現実をどのように見ているのでしょうか。

改めて要介護区分の内容

改めて、要介護区分ごとの状態を簡単にまとめておきます。

<自立(非該当)>

1人で日常生活を送ることができ、介護や支援が必要ない状態

<要支援1>

基本的にはほとんど自力で日常生活を送ることができるが、掃除などの複雑な動作において部分的な支援が必要な状態

<要支援2>

基本的にはほとんど自力で日常生活を送ることができるが、運動機能に少し衰えが見られ、部分的な支援が必要となる場面が要支援1よりも多い

<要介護1>

身の回りのことはたいてい自力で行えるが運動機能や認知機能にやや衰えが見られ、日常生活を送る上で見守りや部分的な介護が必要な状態

<要介護2>

日常生活において自力でできないことが増え、排泄や入浴など部分的な介護が必要な状態。認知機能が衰え、理解力や思考力が低下している

<要介護3>

自力で日常生活を送ることが難しく、歩行、食事、排泄など全面的な介護が必要な状態。認知機能の低下により問題行動が見られることもある

<要介護4>

起き上がりや歩行、入浴など全面的な介護が必要で、介護なしには生活を送ることができない状態。思考力や理解力の低下によって意思疎通がやや難しい

<要介護5>

寝たきりで意思疎通が困難な状態。寝返りやおむつ交換など全面的な介護が必要とされる

Next: 終の棲家によってサービス格差も?老後は地方自治体の財政次第に…

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