fbpx

スズキ株急落~投資家は三菱自動車の「二匹目のドジョウ」を狙えるか?=栫井駿介

成長著しいインドで圧倒的な強み

株価下落により、スズキは本来の価値よりも割安な水準になっているでしょうか。ここで改めてスズキという会社について振り返ってみます。

スズキ<7269> 日足(SBI証券提供)

スズキ<7269> 日足(SBI証券提供)

売上高に占める割合は、9割以上が自動車です。自動車の他にバイクなどを販売していますが、その割合は1割未満にすぎません。日本では軽自動車を中心とする小型車に強みを持ち、シェアは毎年ダイハツと熾烈なトップ争いを繰り広げています。

特筆すべきは、スズキが日本以外で得意とする国です。実はインドで4割近いシェアを持ち、同国では圧倒的です。日本における自動車販売台数は70万台ですが、インドでは130万台も販売しています。他の自動車会社がインドを攻めあぐねている中で、スズキは唯一成功している会社といってよいでしょう。

160521suzuki_r_1

インドは所得水準が低く、これまでは自動車が販売できるような状況ではありませんでしたが、経済発展に伴い自動車の販売台数も増えています。昨年の販売台数は340万台で、世界第5位の市場となっています。ちなみに世界1位は中国で2,500万台、日本は500万台で世界第3位です。

参考リンク:世界の自動車 販売台数 国別ランキング・推移 – GLOBAL NOTE

経済発展理論で言えば、一人当たりGDPが3,000ドルを超えると自動車が普及すると言われています。インドは現在1,500ドルであり、3,000ドル超える日もそう遠くはないでしょう。

ちなみに、一人あたりGDP1,500ドルというのは2005年頃の中国と同じ数値ですが、中国は2009年に3,000ドルを突破しています。12億の人口を抱えるインドは、経済発展が進むにつれて将来的には中国に次ぐ大市場となることが予想されます。

引く手はあまた

スズキの強みは、軽自動車に代表されるように、安くて小さな車を作ることです。インドのような経済発展がまだまだこれからという場所では、とにかく安くて丈夫な自動車が求められます。世界を見渡しても、同様の強みを持っているメーカーはほとんどありません。

スズキの日本における1台あたりの平均売上高は140万円ですが、インドでは70万円とかなり金額が抑えられています。それでもインドにおける営業利益は日本を上回っており、安く作ることに関しては相当なノウハウを持っていると考えられます。

独自の強みを持つスズキですから、他社にとっては非常に魅力的です。今年はじめにトヨタがスズキと提携するという観測報道も出ましたが、それがまことしやかに語られるほど、よその会社は欲しがっているのです。

トヨタ自動車が、苦手分野のてこ入れをねらう「次の一手」が浮上した。新興国市場に強いスズキとの幅広い提携を検討する一方、小型車を得意とするダイハツ工業を完全子会社化する方向だ。ただ、スズキとは正式な協議に入る前の段階で、思惑通りに提携が実現するかは予断を許さない。

出典:トヨタ、苦手分野の解消へ一手 スズキとの提携検討 – 朝日新聞(2016年1月28日)

Next: PER11倍(コンセンサス予想)のスズキは三菱自の「二匹目のドジョウ」になるか

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー