米国内で分断が相次ぎ、政治の機能不全が起きています。さらにはバイデン大統領に機密文書の持ち出し疑惑が浮上し、リーダーシップに限界が見られます。米国政治の機能不全は、日本などの同盟国に大きな負担となりかねないだけに、これを看過することはできません。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2023年1月20日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
米国政治の機能不全
世界をリードする米国で気になる動きが続いています。
13日にワシントンで日米首脳会談を行いましたが、会談後の共同記者会見は行われませんでした。機密文書の持ち出しを指摘されたバイデン大統領がその点を突かれるのを嫌い、記者会見を回避したと見られます。
また下院を支配した共和党が、下院議長の選出に難航、妥協の末15回目の投票でようやくマッカーシー議長選出にこぎつけました。
米国政治の機能不全は、日本などの同盟国に大きな負担となりかねないだけに、これを看過することはできません。
米国分断の広がり
米国の分断は今に始まったことではありませんが、このところ一段と分断が目立つようになりました。
このためバイデン大統領はキング牧師生誕の日に当たる15日、同牧師にゆかりのあるジョージア州アトランタの教会で演説し、社会の分断や過激主義、不正義の解消に向かうべきと訴えました。
トランプ前政権時にこの米国の分断が目立ちましたが、その前のオバマ政権時にも左右が分断され、中間のない分断社会ゆえに、政策的な落としどころが見つからず、法案の通過数が減り、オバマ大統領のリーダーシップが問われることになりました。
その後トランプ政権になって分断がより顕著になり、その統合を訴え、両サイドの大統領になると訴えたバイデン政権でもこの流れは変わりません。
これまでは左右、つまり民主党と共和党との対立が強まり、両者が相れない状況でしたが、年明けの下院議長選挙では共和党内部の分断も露呈し、共和党支配の下院では、マッカーシー下院議長誕生に苦戦し、議長は多くの妥協を余儀なくされました。それだけ議長の影響力が低下し、下院共和党の法案提出も難しくなりました。
従来の民主党対共和党の分断に加えて、共和党内がトランプ派(ネオナチ系)とブッシュ系(軍産複合体)とに割れてしまいました。このままでは24年の大統領選挙に共和党候補が1本化できるのか、難しい状況になりました。
世界には中国分割論が見られますが、これに次いで米国分割論も聞かれるようになりました。
トランプ政権時にはカリフォルニア州の独立論がありましたが、南部を中心にトランプ派系の分離独立の話も出るようになりました。米中二大国がいずれも分断の危機にさらされる中で、大国をまとめるリーダーシップ発揮が困難になり、両国の影響力が低下するリスクがあります。