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出産したら奨学金の返済減免…自民党“異次元にキモい”少子化対策に異論噴出。“官製学生ローン”利用者に子づくりを促す内容に「卑劣なマッチポンプ」との声も

出産を条件に奨学金の返済を減免するとした、自民党の「教育・人材力強化調査会」が固めた提言に、嫌悪を示す声が噴出している。

報道によれば、その柱となるのは、学生時代に奨学金の貸与を受けた人が子どもをもうけた場合、返済額を減免するというプラン。20~30代前半の子育て時期に返済時期が重なる奨学金の返済額を減らすことで、子どもの教育にお金を掛けられるようにするのが狙いだという。

この提言だが、政府が3月末をめどにまとめる「異次元の少子化対策」の「たたき台」への反映を目指しているという。

奨学金返済に窮する若者の実態を逆手に取る卑劣ぶり

“異次元の少子化対策”を発表した今年の年頭会見では、「若い世代から『ようやく政府が本気になった』と、思って頂ける構造を実現すべく、大胆に検討を進めてもらいます」と、ドヤ顔で話していた岸田首相。

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今回取沙汰されているプランは、その具体案として浮上してきたものなのだが、あたかも奨学金返済減免をエサに女性に生殖を促すといったその発想に、SNS上からは「キモイ」「グロテスク」といった、生理的な嫌悪感を示す反応が噴出する事態となっているところだ。

そもそも奨学金といえば、最近では日本の大学生の約半数が受給しているという話もあるが、アメリカなど海外では返済不要の“給付型”が多いのに対し、日本では卒業後に返済しなければならない“貸付型”が主流となっているのはご存知の通り。

結果、そんな学生の大半は数百万の借金を背負った形で社会に出ることになるのだが、近年は経済の低迷で収入が不安定化していることもあり、返済に窮するケースが増加。昨年には、400万円という奨学金の“負債”を抱えていた新社会人の20代女性が、窮した末にいわゆる投資詐欺に引っかかり、150万円もの借金をさらに抱えたことを苦に、自殺してしまったという痛ましい話もあった。

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教育機会の均等には寄与しているとの評価もある反面で、文科省官僚たちの天下り先確保が目的で、各地に増殖させた大学を維持させるためにあるとも指摘される日本の貸付型奨学金は、一部からは“官製学生ローン”と呼ばれることも。

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国はそんな奨学金が抱える問題をほぼ放置しているどころか、多くの若者が返済に窮する状況を逆手に取って出生率上昇に利用しようとしているわけで、それだけに「卑劣なマッチポンプ」などとの批判の声が殺到するのも当然といったところだろう。

ラストチャンス迫る日本の少子化問題

つい先日には、2022年における国内の出生数が前年比5.1%減の79万9,728人と、統計を取り始めた1899年以来、初めて80万人割れとなったと報じられるなど、少子化問題はすでに危険水域に達しているといった状況。

さらに、このところ大いに話題になっているのが、少子化対策は“2025年頃までがラストチャンス”であるという見方。というのも、先述のように出生数が長きに渡って減り続けているなかで、2025年頃からは20代の人口が急激に少なくなることがわかっており、それらの世代が低い出生率のままだと、今後さらに急激に人口減少が進むと見込まれているのだ。

ちなみに2021年の日本における出生率は1.3だが、日本の人口を9,000万人弱で維持するためには、出生率を2030年に1.8、2040年には2.07まであげる必要があるとの試算が。

ただ、最近BIGLOBEが行った「子育てに関するZ世代の意識調査」によれば、いわゆるZ世代男女の45.7%が「将来、子どもがほしくない」と答えたとのこと。その理由はお金の問題ばかりではなく、子育てに自信がない、自分の自由が無くなるといったものもあるようだが、ともかくこの状況では出生率アップなど到底望めないというのは明白だろう。

そんな危機的状況なだけに、岸田首相がぶち上げた“異次元の少子化対策”に関しては、その具体的な内容が少なからず注目されていたのだが、その想像のはるか上を行く悪い意味での異次元ぶりに、怒りとともに失望感も広がっているといった状況のようだ。

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