fbpx

安心できない?会社員「定期健康診断」の真実。ガン患者のうち発見できたのは14%…目的は社員の健康管理に非ず=俣野成敏

サラリーマンは年1回の健康診断が義務付けられています。これ、「検査で引っ掛からなければ安心」と思ってはいないでしょうか?医学博士にして総合内科専門医の鈴木嘉洋先生に、健康診断はどこまで有用性があるのか?について話を伺いました。( 俣野成敏の『サラリーマンを「副業」にしよう』実践編 俣野成敏の『サラリーマンを「副業」にしよう』実践編

【関連】なぜ日本は「安い国」に成り下がったのか。安い物価のツケを低賃金で払い続けてきた私たち、インフレで総貧困化へ=俣野成敏

※本記事は有料メルマガ『俣野成敏の『サラリーマンを「副業」にしよう』実践編』2023年3月15日号の一部抜粋です。続編にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:俣野成敏(またのなるとし)
リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳で東証一部上場グループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。2012年独立。フランチャイズオーナーや投資家として活動。サラリーマン時代に副業で出版した『プロフェッショナルサラリーマン』でビジネス書作家デビュー。「仕事術」「お金」「コンディション」「副業」などテーマは多岐にわたり、異分野で10万部超えを3度達成。著者累計は49万部。これからは、サラリーマンでも副業やお金の知識向上が不可欠と実感し、啓蒙に尽力している。ビジネス誌やwebメディア掲載実績多数。『まぐまぐ大賞』を7年連続受賞。

会社の健康診断だけでは安心できない?

今回は「安心できない!? 健康診断の“真実”」特集をお送りします。

サラリーマンの方は、労働安全衛生法によって、年1回の健康診断を義務付けられています。大勢でまとめて検査する集団検診に参加している人も多いと思いますが、「検査で引っ掛からなければ安心」と思ってはいないでしょうか。

本日も、スペシャルゲストをお呼びしております。医学博士にして総合内科専門医の鈴木嘉洋先生です。今回は、「健康診断はどこまで有用性があるのか?」について、鈴木先生にお話を伺いたいと思います(本特集は、会話形式でお送りします)。

プロフィール:鈴木嘉洋(すずき よしひろ)
医学博士。呼吸器内科専門医・指導医、総合内科専門医。愛知県刈谷市出身。臨床研修医を経て、呼吸器内科医として総合病院に勤務。途中、名古屋大学大学院にて研究にも携わり、博士号取得。肺ガン、肺炎、喘息、COPD、新型コロナウイルス対策など多岐にわたる呼吸器疾患の診療にあたり、その中で肺癌症例や、高齢者について数百人の看取りを経験。総合病院にて科をまとめる職務を担いながら、病気になった人に薬を出すだけの現代医療に対して疑問を抱く。「健康な人が病気にならないためのアプローチをすることが、医療の本来の役割である」という信念のもと、現在の医療体制に限界を感じ、2022年に総合病院を退職。2023年春に開業予定の再生医療医院・サーチュインクリニックの院長に着任。患者様の豊かな人生を支える礎となるべく、クリニック開業に向けて準備を進めている。

※本記事は、鈴木先生への取材をもとに、筆者(俣野)が適宜内容を補って執筆しています。

集団検診の目的は、社員の健康管理ではない

俣野:サラリーマンは健康診断の受診が義務になっていますが、実際のところ、その効果はどれほどのものなのでしょうか。

鈴木:今や国民病とも言われるガンを例に挙げると、2020年にガン検診・健康診断などでガンが発見された人は、ガン患者のおよそ14%でした。

残りの86%のうち、他の疾患による経過観察中に受けた検査で発見された人が30%強で、それ以外は自覚症状が出てから受診し、発見された人などでした(国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録全国集計」より)。

俣野:14%という数字を、高いと見るか低いと見るかですが。

鈴木:このデータによると、他の検査で偶然ガンが発見された人は、集団検診の倍以上いることがわかります。その理由は、おそらくそれらが個別検査だったからなのではないでしょうか。集団検診よりも、個別検査のほうが、より精度が高くなるのは理に適っていると思います。

もちろん「もっと集団検査の精度を上げられないのか?」という点については、現在も努力が続けられているとはいえ、集団検診という特性上、限界があります。

統計学の難しい話は割愛しますが、そもそも集団検診は、有病率が低い集団に行うため、どれだけ検査精度(感度・特異点)が高くても、陽性的中率が数%にとどまってしまいます。つまり、集団検診で陽性であったとしても偽陽性の占める割合が圧倒的に高いということです。

検査を受ける人にとっては、心理的にも、費用や手間の面からも負担が大きいわけです。

ではなぜ、精度に限界のある集団検診を行うようになったのかというと、1916年(大正5年)から施行された工場法がもとになっているといわれています。

当時、日本の主な輸出品といえば生糸や綿織物などで、繊維工場という劣悪な環境の下、女工や子供などが働いていました。もともと衛生環境が悪い上に、栄養状態も悪く、職場を通じて結核などの伝染病が広がっていたのです。

こうした事態を改善するために施行されたのが工場法で、これが戦後の労働基準法や労働安全衛生法へとつながりました。

集団検診とは、本来、労働者の最低限の健康管理が目的で行われています。職場の労働環境に問題がないかどうかを把握するためのものであり、個人の健康や、ガンなどの大きな病気を見つけるためのものではないのです。これは、厚生労働省自身が述べていることです。

(参考文献:公益財団法人生命保険文化センターHP、厚生労働省HP、厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断に関するFAQ」ほか)

Next: 健康は自分で守るもの。集団検診は「検査しやすい」内容になっている

1 2
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー