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「AI革命」の抵抗勢力として日本が輝く日。変化を恐れる国民性に世界が羨望の眼差し=高島康司

前回記事では、2023年を起点に始まっている人工知能の劇的な進化がもたらす影響を包括的な視点から解説した。今回は、AI革命が日本に及ぼす影響について解説する。おそらく、多くの日本人はAIの導入に抵抗するだろう。そうした抵抗がもたらす変化を概観する。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)

【関連】今ここが人工知能「人間超え」の出発点。米国覇権の失墜、金融危機、大量辞職…2025年には劇変した世界が待っている=高島康司

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「シンギュラリティ」後にも残る日本的な世界

「シンギュラリティ(人工知能が人間を超える転換点)」のAI革命がもたらす日本への影響について解説したい。日本はユニークな方法で生き残りそうだ。

前回の記事にも書いたように、2023年の今年は人工知能の発展に向けた「シンギュラリティ」の原点になる年だ。アメリカや中国の最先端IT企業が激烈な競争を展開し、凄まじいスピードでAIが発展することだろう。ネットにはAIを活用したサービスが溢れ、我々も朝起きたときから夜寝るまでAIにどっぷり使った状態になるはずだ。

いま我々はスマホがない生活など考えられないが、あと半年もするとスマホと同じようにAIに依存するようになる。日々の食事の献立、個人的な悩みの相談。あらゆる形態のリサーチ、あらゆる文書の執筆、SNSの投稿、プログラミング、デザイン、通訳と翻訳など私達のあらゆる活動が人工知能が提供するサービスが担うようになる。

この結果、2025年くらいには、多くのホワイトカラーが担う頭脳労働が必要なくなる可能性が高い。デザイナー、プログラマー、弁護士、通訳、税理士など多くの専門職が人工知能に置き換わる。そのため、いままで安定していた専門職とホワイトカラーの賃金は大きく減少し、少ない仕事を巡って競争が激化する。

1990年代の半ばから2010年くらいにかけて、グローバリゼーションとIT化の影響で一般の労働力に起こった変化が、今度は専門職のホワイトカラーを襲う。これは、中産階層のさらなる分解に結果するだろう。

この波は全世界を襲う。だが、日本だけが少し違った状況になるかもしれない。

90年代の半ば頃から本格化したグローバリゼーションの流れには、日本人は強く抵抗した。変化することを拒んだのだ。これと同じように、いま始まりつつあるAIの「シンギュラリティ」に多くに日本人も、また日本企業も抵抗し、その結果思いもよらない結果になるかもしれなのだ。

グローバリゼーションに抵抗した日本

これがどういうことなのか理解するためには、かつてのグローバリゼーションにどのように日本人や日本企業が抵抗し、変化することを拒んだのか見る必要がある。おそらくAI革命でも同じことが起こり、類似した結果になることがはっきと見えてくるはずだ。

グローバリゼーションには様々な定義はあるだろうが、基本的に生産拠点の海外展開のことである。これまで国内に集中していた生産拠点を、労働力の安い海外に移転して、インターネットを活用したネットワークでそれらの拠点を結び、効率的に生産を組織する方法をグローバリゼーションという。

このグローバルな生産システムが、先進国の主導的な産業であり、雇用数がもっとも大きい製造業に導入されると、それは大きな社会変化をもたらした。生産拠点の海外移転によって国内産業は空洞化し、大規模なリストラが行われた。その結果、中間層の中核であった産業労働者が没落し、それとともに中間層全体が分解したのである。

この変化は、欧米では極めて急速に起こった。1990年代の半ばから始まり、5年後の21世紀初頭には産業の空洞化と中間層の没落は深刻な問題となった。アメリカやイギリスの主導的な産業は、製造業から、雇用効果の低い金融産業へと移り現代に至っている。

しかし、日本の対応はかなり異なっていた。多くの企業が生産拠点を、労働力の安い海外に全面的に移転しなかったのだ。その理由は複数あるが、やはりもっとも大きいのは大規模なリストラの実施に対して、多くの日本企業が消極的であったことだ。日本企業は、従業員や地域社会とのつながりを重視することが多い。大規模なリストラを行い企業の共同体を解体し、長年の関係を築いてきた国内のサプライヤーを放棄することはできなかった。その結果、国内で生産を継続することを選択した。

だからといって、日本企業が終身雇用と年功序列を主軸にした伝統的な雇用慣行と、正社員をメインにした組織を温存したわけではない。世界的なグローバリゼーションがもたらしたコスト削減の圧力はことのほか大きかった。国際的な競争力を維持する必要からコストの大幅な削減の必要性に迫られた日本企業は、賃金の低い派遣労働者に切り替えることで、なんとか国内の生産拠点を維持した。

もちろん、正社員から派遣労働の切り替えは大きな社会問題を発生させた。格差の拡大と中間層の分解である。これが引き起こした社会問題の拡大は、2009年の民主党政権を成立させた。だが、日本の問題の規模は、主要な生産拠点が一斉に海外に移転し、国内産業が徹底して空洞化した欧米よりも、ずっと緩やかだった。問題の発生のペースも、欧米が数年単位で社会が激変したのに対し、日本では変化は相対的にゆっくりと起き、10年単位で問題が顕在化した。

Next: 世界の変化から取り残された「水たまり」?日本が脚光を浴びる理由

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