fbpx

「出遅れ」日本の電気自動車が勝てる道は2つだけ。圧倒的“価格差”で同じ土俵では戦えない=斎藤満

米国製EVには7,500ドルの価格支援

米中間でEVの価格は明らかに格差があり、中国の価格優位は揺るぎません。

そこで米国政府は、米国製のEVには1台当たり7,500ドルの補助金を出すことにしました。その分米国の消費者はEVの購入コストが安くなります。しかし、この補助金の対象は、米国製車で、しかも電池も米国製の部品を半分以上使ったものに限ると言います。

そうなると、日本で製造したEVを米国に輸出しても、米国では補助金の対象にならず、価格面で米国製EVに対して不利になります。その補助金を得るためには、電池も含めて米国で生産せざるを得なくなります。

現地生産化の是非についてはほかの要素も含めて検討の余地がありますが、少なくとも日本からの輸出に関してはそれだけ価格競争力をそがれます。

一方、日本国内ではこれまでのエコカー減税やサポカー補助金が、予算の枯渇もあって自治体分も含めて終了してしまいました。この点からも日本のEVやハイブリッド車の価格競争力で、従来より不利になるわけで、米国のEV補助金と日本の姿勢とが逆行します。

相手の土俵では戦えない

日本のEVで最も価格競争力のある日産リーフSでも表面価格は300万円前後です。テスラより安価ですが、中国製EVやインドのタタ社のEVとは価格面で対抗できません。中国のBYDは日本への攻勢を考えています。

リチウムイオン電池ではパナソニックの技術が中国でも重視されていて、その取り込みを画策しているようですが、全体的にはリチウムの資源が豊富で、人件費などのコスト優位性のある中国とは真っ向勝負はできません。その分、自動運転技術や内装、居住性などで差別化を狙いますが、ガソリンエンジン車ほど、差別化はしにくいと言います。

実際、自動運転技術では米国のテスラも中国BYDも進めていて、日本の独自性は打ち出せません。これまで日本車を支えていた安全性、信頼性もガソリン車ゆえのもので、EVになると日本もその優位性を示す余地が小さくなります。せめて電池の容力、効率性から航続距離で優位性を示すくらいです。

それも充電ステーションなどの施設の数、密度が高い国と、ほとんど敷設が進んでいない日本を考えると、航続距離で圧倒的優位を示し、途中充電の必要性を排除できるほどの差がつけられれば別ですが、電池でそこまでの差別化は容易でありません。

従って、中国や米国とは別の土俵で勝負せざるを得ません。

Next: 劣勢の日本メーカー…米中とは違う土俵で戦うには?

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー