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このままでは「子どもに負担をかける少子化対策」というブラックジョークに。なぜ票集めのバラマキで予算が消えるのか?=斎藤満

無駄な投薬も

その一方で、必要性に疑問のある投薬も認められます。

例えば、18歳以下の子どもがいれば、高所得世帯も資産家世帯も児童手当を受給できるようにしました。子どもを持つのに経済的な制約のない世帯にまで支援をすることが、どれだけ少子化の改善につながるのでしょうか。その資金を誰かが負担することになることも考えねばなりません。

また一部の自治体では合計特殊出生率が1を下回るなど、少子化が深刻なために、独自に幼児や児童の医療費無料化、学費の無償化を進めているところがあります。これらに対して、交付金などで資金支援するのか、国費で負担する形にシステムを作り替えるのか、現場との調整ができているのでしょうか。

若者の将来不安軽減策を

子どもを持ちたくても持てない人々への支援が重要です。

不妊治療の保険適用など、医療面での負担軽減は進んでいますが、そもそも経済的な制約から、結婚・出産をあきらめている人々を救済する観点が必要です。

特に、現在平均年収190万円の非正規労働者は、仕事がいつ切られるのか、収入が増えるのか、多くの将来不安を抱えています。しかも、老後の貯えができるのか、非正規のままで無年金になったら老後をどう生きるのか、不安は募ります。

この将来不安が強いなかでは、なかなか結婚にも踏み切れません。共働きで結婚できても、子どもを持つ余裕がないという人々も少なくありません。

こうした若者の将来不安を軽減することが、結果的に結婚件数・出生数の増加につながる面があります。直接効果が見えにくい分、対策を打ち出しにくい面はありますが、所得の増加期待や、社会保険の適用で厚生年金の受給資格が得られれば、多少なりとも不安は軽減されます。

そのためには、4割近い非正規労働への対処が必要です。

この非正規化はもともと企業の人件費削減策として打ち出されました。実際、低成長でも企業の人件費負担が抑制された分、企業収益は最高益を更新しています。

その一方で、労働者に「ワーキング・プアー」が増え、労働分配率の低下が国内需要を低減させ、企業にとっても需要減となり、投資の抑制、内部留保の積み上げ、低成長化の悪循環になっています。

非正規の正規雇用転換、ないしは非正規労働者への社会保険負担を進め、内部留保課税が財産権侵害となるなら、その残高への課税ではなく、毎期の利益準備金への繰り入れ分に法人税をかけ、それを少子化対策への財源に充てる手もあります。

Next: 「子どもに負担をかける少子化対策」というブラックジョーク

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