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なぜ金価格「史上最高値」更新?国家も個人投資家もこぞって買う事情。今から投資するのはアリかナシか。投資手法と注意点も=岩崎博充

日本以外のG7は着々と金を増やしている

2022年は、周知のようにFRB(米連邦準備制度理事会)を中心に、インフレ政策の一環として金利を大きく引き上げる「金融引き締め政策」がとられた。本来であれば、利息も配当もつかない金の価格は、金利上昇とともに下落するのが市場のメカニズムだが、ロシアが経済制裁を受けて原油や天然ガスの米ドル決済を禁止されたことから、ロシアの支援に動くトルコや中国、ウズベキスタン、インドが金買いに動いたとみられる。

ちなみに、金の保有量ランキングでは次のようになる(資料:WGC)。

1. 米国……8,133トン(外貨準備に占める割合:68.7%)
2. ドイツ……3,354トン(同68.2%)
3. IMF(国際通貨基金)……2,814トン
4. イタリア……2,451トン(同65.4%)
5. フランス……2,436トン(同67.0%)
9. 日本……845トン(同4.3%)

こうしてみると、日本を除くG7諸国の外貨準備に占める金の保有量が、非常に大きいことがわかる。その点、ロシア(6位、2,326トン、24.9%)や中国(7位、2,068トン、3.9%)は少ない。今後も、ロシアや中国が「米ドルを基軸通貨としない世界のシステムづくり」に挑戦するとすれば、まだまだ金は買われる可能性が高いと言っていい。

日本の外貨準備高はざっと22年9月末で1兆2,380億ドルで世界第2位。他のG7諸国の4~13倍もあるが、その大半が米ドルで、財務省所轄の「外国為替資金特別会計(外為特会)」にその大部分が保管されている。将来的に、日本円が暴落したときに円を買い支えるために準備されていると言われる。

莫大な財政赤字を抱える日本政府が発行する「円の紙幣」に対して、少なからぬ不安を抱いている人は、やはり将来的な円の暴落に備えて、たとえば金などに投資しておくのもひとつの方法というわけだ。

個人投資家のインフレ対応で2022年の金需要は18%増!

2022年は、金が世界の中央銀行や政府に買い上げられたことで、その価格は大きく上昇したのだが、実はそれだけではない。個人投資家による金需要も大きかったようだ。WGCのデータによると、2022年の金の総需要は4740.7トン、前年比18%と大幅に増加したことが分かった。

近年、金の供給量はトップの中国が生産量を増やし続けてきたこともあり、全体的に増え続けてきた。WGCのデータによると、ここ10年は年間3,400トンの金を世界中で産出しており需給のバランスがとれていたのだが、2020年のコロナ以降、金の生産量は頭打ちになっていると言われる。現在は金の需要が供給を上回っている状態と言っていい。

2022年以降は、世界的にインフレが進行。価値が目減りしにくく、インフレに強い金が世界中で買われた。とりわけ、中央銀行や公的機関による金の購入は2.5倍に増加。中央銀行の金準備100トン当たりで、金の国際価格は1トロイオンス当たり40ドル程度の上昇圧力になると報道されている(日経新聞、2月18日朝刊)。

加えて、インフレや地政学リスクの高まりなどから個人による金投資も増えており、2022年
は金地金や金貨といった個人投資家が投資するタイプの金投資でも、1,217.1トン(資料:WGC)、前年比で2%増えているそうだ。インフレの進行で紙幣に対する信頼感の喪失から個人投資家の金需要が増えた、ということだろう。

そして、もう1つ忘れてならないのは為替の影響だ。周知のように、ドル円レートは瞬間的に1ドル=150円台を付けるなど円安が進んだ。金価格は、米ドル建ての国際価格と円ベースの国内価格で形成されているが、急速な円安を追い風に金価格は急騰した。

たとえば、1ドル=115.86円だった2022年1月の国内金価格は平均で1g=6,755円(田中貴金属工業調べ)、一方の国際価格は1トロイオンス=1,816.77ドル。2023年4月の金価格は1g=8,620円(同、1ドル=134.40円)、国際価格は1トロイオンス=2,000.42ドルだった。米ドル建てでは10.1%の上昇となったが、国内価格では27.6%も上昇したことになる。

Next: 戦争・インフレ・金利……不安定な時代にこそ輝く金価格の今後は?

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