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なぜ金価格「史上最高値」更新?国家も個人投資家もこぞって買う事情。今から投資するのはアリかナシか。投資手法と注意点も=岩崎博充

戦争・インフレ・金利……不安定な時代にこそ輝く金価格の今後は?

問題は、史上最高値を更新した金価格が、今後どんな動きになっていくかだ。2022年の金融マーケットは、株式市場や債券市場、そして暗号通貨に至るまで、近年まれに見る下落相場に終わった。とりわけ、暗号通貨は価格が半分以下にまで下落し、米国のナスダック市場も大きく下げた。その点、金はほぼ横ばいをキープし、欧米の金融不安などを機に、再び史上最高値を更新するレベルにまで上昇している。

現在(6月28日現在)、金価格は1,920ドル台に落ち着いているが、今後の展開次第では、さらに金価格が上昇する可能性がある。もともと金価格は長期に渡って価格が低迷していた時代もあり、金投資の基本は長期運用と言われてきた。しかし、現在のように戦争やインフレ、パンデミックといった不安定な時代には、金の長期的な価格上昇が望める可能性が高い。株式市場や債券、暗号通貨などが最悪な状況になっても、金価格はさほど大きく下落しない……。それが現在の金投資の共通の認識になりつつある。

理想は現物の積立だが、現物保有やETF投資も……

不安定な時代の中で、人々の関心はいかに自分の資産を守ればいいのかに集中してくる。そこで金投資が注目を浴びてくるのだが、注意したいのは比較的安心感のある金に自分の資産をどんどんシフトしていこうと考える人がいることだ。金投資は、現時点では確かに魅力ある金融資産のひとつだが、あくまでも全資産の10~30%の範囲内に抑えるのがセオリーと言われている。億単位の潤沢な資金を持っている人なら3割程度まで金を保有しても問題はないが、通常はせいぜい10%程度と考えるべきだろう。

金投資にはメリットもあればデメリットもある。金は世界で価値が統一されているために、いわゆる「ソブリンリスク」がなく、国家間の紛争や通貨の変動に強い。さらに希少金属のひとつ
であり、産出量などに限界があり、紙幣や暗号通貨のように、ただの紙くずや無価値にはならない。

しかしその反面で、預貯金や株式と異なり利息や配当を産まないために、保有しているだけでは1円の得にもならない。さらに、日本の場合は為替の影響を受けるため、円高時には損失を出すことになる。そうした現実を踏まえて、昔から金は「基本は長期投資」と言われてきた。これから投資するのであれば、それなりの覚悟が必要だということだ。

その金投資には、次のような投資法がある。簡単に紹介しておくと――

<純金積立>

文字通り金を少額ずつ積み立てていく方法で、ドルコスト平均法で長期にわたって積み立てていく方法。純金だけではなく、最近では金価格に連動するETF(上場投資信託)を使って積み立てていく方法もある。ただ、金投資にはどうしても売買に手数料や税金がかかる。そうしたコストを考慮に入れるべきだ。

<スポット投資>

金価格が大きく下落したときに、まとめて投資する方法。現物投資でもいいが、現物投資に比べて手数料などコストの面でETFのほうが気軽に投資できそうだ。

<金関連株投資>

金鉱山などを保有している銘柄の株式に投資する方法……住友金属鉱山(5713)などに代表される金鉱山を保有する銘柄に投資する方法だ。株式市場全体が下落しても、金関連銘柄は、市場全体とは逆に動く場合もある。株式投資のリスクヘッジとしての機能もありそうだ。

今後、金価格がさらなる高値をチャレンジするチャンスはいろいろありそうだ。「ウクライナ戦争の状況悪化」「資源価格高騰によるインフレの悪化」「金利のさらなる上昇」「日本円や日本国債の暴落」といったことが直近で考えられる。その反面で、これらの問題が解決していくたびに、金価格は下落する可能性がある。いずれにしても、金投資で短期間によるリターンを狙うことはやめたほうがよさそうだ。

image by: RomanR / Shutterstock.com
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2023年6月28日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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