fbpx

AFURI、日本酒「雨降(あふり)」の酒蔵を商標権侵害で提訴。地名由来の名称の“独占”に「強欲ラーメン屋」など批判が殺到&不買運動への発展も

神奈川県伊勢原市にある日本酒の醸造所「吉川醸造」が、商標「AFURI」を巡って、人気のラーメンチェーン店「AFURI」を展開するAFURI株式会社に提訴されたと公表したことが、大きな波紋を呼んでいる。

吉川醸造が今月22日に公開したリリースによれば、AFURI社は吉川醸造が製造販売している日本酒「雨降(あふり)」に付された商標が、商標権の侵害にあたると主張しているといい、吉川醸造側の商品を全て廃棄処分すること等を要求しているとのこと。双方ともに弁護士を立てて協議を重ねたものの、最終的に不調に終わったことから、AFURI社は商標の使用差止や損害賠償等を求めて東京地方裁判所に提訴したという。

さらに同リリースには、AFURI社が「阿夫利」「AFURI」で構成される商標を、ラーメン以外に150種類以上の物品・役務について取得しているとの記載も。このことに関して、「あふり」に関する名称を持った商品を扱う地元企業からも、不安の声が少なからずあがっていることから、吉川醸造としては一定の情報開示をする責任があるとし、事の公開に至ったということだ。

商標戦略に長ける印象のAFURI社

ラーメンチェーン店「AFURI」のサイトによれば、同店は神奈川県厚木市にある「ZUND-BAR」のラーメンを、より多くの方に味わってもらうために、2003年に東京の恵比寿に一号店を出店したのがはじまり。

その後は中目黒・麻布十番・六本木といった、都内のいずれも一等地に相次いで出店するいっぽうで、日清食品とのコラボでカップ麺も断続的に発売するなどして、知名度を全国区に拡大。現在では日本国内だけでなく、アメリカの複数店舗にくわえシンガポール・香港・リスボン等にも出店し、海外でも人気を博している。

このAFURIのラーメンだが、神奈川県丹沢山系の東端に位置する大山(阿夫利山)の麓から湧き出る天然水で、スープを仕込んでいることを大きなウリとしており、この阿夫利山からAFURIという名を頂いたというのが、店名の由来とのことである。

いっぽうで吉川醸造のほうだが、大山の麓にある神奈川県伊勢原市に所在する創業1912年の酒蔵で、こちらも大山の伏流水を用いた酒造りを古くから続けてきたという。

大山は麓が晴れた日にも山頂は霧や霞で覆われることが多いことから、古来から雨降山(あふりやま)と呼ばれていたこと、さらに大山にある大山阿夫利神社において酒造の神を祀っていることから、自社の日本酒の銘柄に「雨降(あふり)」と名付けたとのこと。ちなみにラベルにある「雨降」の文字は、大山阿夫利神社の神官に揮毫してもらったものなのだそうだ。

このように、同じ大山の麓から湧き出る清らかな天然水を用いて、ラーメンあるいは日本酒造りを行っている両企業が、“AFURI”という名前の取り合いをしているというのが、今回の騒動の簡単な構図といったところのよう。だが、いわゆる商標戦略という面では、“AFURI”絡みの商標をラーメン以外の150種類以上の物品などに関して、あらかじめ取得していたAFURI社のほうが、一歩も二歩もリードしているといった印象だ。

殊に「清酒」に関してだが、一部報道によるとAFURI社は2020年4月14日に商標登録をしたものの、同社がAFURIブランドの清酒を発売した形跡は特になかった模様。3年以上使用されていない登録商標に対しては、不使用取消審判を請求することで取消することができるのだが、AFURI社は2023年3年6日に清酒を指定しての再出願を行ったとのこと。

いっぽうで、吉川醸造のほうも「雨降(AFURI)」の商標出願を行ったというのだが、出願日は2023年3月14日と、先述のAFURI社による再出願の約1週間遅れだったというのだ。

地名由来の商標を独占するAFURI社に「自分勝手」との批判が

商標登録といえば近年では国内のみならず海外、とりわけ中国との出願合戦が熾烈で、過去にはあの「無印良品」が、中国において現地企業に商標登録されてしまったうえに、その企業に商標侵害で訴えられ、本家の無印良品が敗訴してしまうという、驚きの出来事があったことも記憶に新しい。

【関連】「日本の地名」まで盗み取る中国に常識は通用せず。国家ぐるみの勝手な商標登録、ブランド乗っ取りに我々はどう対処すべきか?=鈴木傾城

【関連】中国で「小室圭おむつ」誕生?商標“横取り”の餌食となる日本の皇室…すでに佳子さまの名を冠した生理用ナプキンも存在する異常事態

そういったトラブルから自社のブランドを守るためにも、AFURI社のように片っ端から商標登録しておくというのも、最近ではひとつの常套手段となっているわけだが、今回の件に関しては「強欲ラーメン屋」「中々に自分勝手だねAFURI」などと、AFURI社側に対する批判の声が目立つといった状況。

そもそもAFURI社が、大山や阿夫利山といった発祥地の地名・自然物を由来にした名を冠しておきながら、同様のことを他の地元企業には許さず、名称を一切使わせないといった主張は、傍からすればどうしても自分勝手な所業だと見えかねないところ。さらにAFURI社側が、吉川醸造の造った商品を全て廃棄処分するよう求めている点も、同様に傲慢な態度だと映ってしまっているようだ。

(8月30日追記:本件についてAFURI側も企業ホームページにてリリースを公開。国内外数店舗で「AFURI」ブランドの日本酒を販売していること、また吉川醸造には「AFURI」の使用を中止することを条件に在庫販売については認めており、商品の廃棄を求めていたわけではないと説明しています。)

SNS上では、AFURI社による今回の対応への反感が高じて「もうAFURI食べる気なくなった」などといった、いわゆる“不買”を訴える声も多数上がっている状況。今後は司法の場で争われることとなる今回の件は、やはり商標戦略に長けるAFURI社側が優位に進める可能性が高そうとの見方が大勢のようだが、このままではそれ以上のブランドイメージの毀損を招く格好にもなりかねないといった情勢のようだ。

Next: 「経営や権利よりまずラーメンの味を立て直してくれよ」

1 2
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー