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台湾有事を仕掛けるのは中国じゃなくて米国。焦るバイデンの命令で日本も防衛力増強中=高島康司

台湾有事はどこまで現実的なのか?

アメリカの「統合抑止」という歴史的な方針の転換やこれに呼応した日本の動きを見ると、中国の脅威、及び台湾有事が現実に迫っているようにも見える。日本のかつてない規模の防衛力増強は、台湾有事のリアリティーを反映しているとも思える。

もちろん台湾有事が実際に発生すると、南西諸島の自衛隊基地のみならず、沖縄や本土の米軍基地が中国攻撃の拠点として使われるため、日本が中国からの攻撃の標的になることは避けられない。

こうした状況を回避するためにも、台湾有事の現実性はきちんと評価しなけれなならない。いますぐにではないにしても、実際はどの程度の現実性はあるのだろうか?

結論から言うなら、習近平政権の中国が武力で台湾を統合することはまずないと思ってよい。習近平の基本哲学は中国の戦国時代の思想家、荀子の著作の中の議兵という章にある「兵不血刃(ひょうふけつじん)」という原則にあるとされている。これは「刃に血塗らずして勝つ」、つまり戦わずして勝つという原則だ。

中国は国内の人権抑圧はあったとしても、国益追求の手段として戦争を用いたケースはかなり少ない。1953年に終結した朝鮮戦争、そしてベトナムに大敗した1980年の中越紛争以くらいである。中国は政治的、経済的な圧力は使うが、海外で戦争を頻繁に行う国ではまったくない。覇権を維持するために、間断なく戦争を引き起こしているアメリカとは対照的だ。

ましてや現在中国は、アメリカの一極支配に代わる多極型の世界秩序の形成に動いており、成功している。「BRICS首脳会議」で宣言された11カ国の拡大BRICSの誕生は、まさにこの動きを象徴している。いま中国はグローバルサウスの国々の結集軸として、中東、ラテンアメリカ、中央アジア、アフリカでアメリカのドルベースのシステムに代わる多極型のシステムを実現しつつある。宿敵だったサウジとイランの中国による和解は、中国の地政学的な影響力の大きさを物語っている。

そのような中国がゆっくりと圧力をかけ、政治的、経済的に台湾を統合することはあり得たとしても、戦争のようなあまりに大きなリスクを中国が取るとは考えられない。習近平政権は、引き続き「兵不血刃」を基本的な方針にすると見て間違いない。

焦っているのはアメリカのほう

では、台湾有事が将来ないのかと言えばそうではない。台湾有事があるとすれば、むしろアメリカが引き起こす可能性の方が高いと見てよい。その背景にあるのは、アメリカの焦りである。

いまアメリカは、スーパーコンピューターやAIに使う先端的な半導体やその製造に必要な装置や技術の中国への輸出を事実上禁止しているが、この制裁には限界があることがはっきりしている。

「ファーウェイ」は西側諸国の多くが認識しているよりも優れており、技術的に驚くべき水準の7ナノメーターのチップの製造に成功している。これは、アメリカの「Nvidia」や「Qualcomm」の最高のAIプロセッサーと同様の機能を持つものである。アメリカがいくら制裁しても、中国の開発力は止められなかった。

アメリカが、ハイエンドの半導体だけではなく、半導体とその製造装置のすべてを輸出停止しない限り、中国の開発力は押さえられないと見られている。

しかし、そうなれば、アメリカの半導体産業だけでなく、半導体産業に依存する数十の産業が大混乱に陥り、アメリカに深刻な経済的影響を受けることになる。中国に対してアメリカはまさにお手上げの状態だ。

Next: 台湾有事の引き金を引くのはアメリカ?実際に起こる可能性は……

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