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マイナス金利の憂鬱~米国にデフレを強いられた日本の残された道=矢口新

米国のゼロ金利が他国の政策金利をマイナスに追い込んだ

最も強い経済の政策金利がゼロ近辺に長期間張り付いていると、そこより弱い経済の政策金利はどうなるか?欧州中銀や日銀のマイナス金利政策は、こうした事情を鑑みれば、「仕方がなかった」という理解もできなくはない。

図05:強い経済のほぼゼロ金利が、他国の政策金利をマイナスに追い込んだ

図05:強い経済のほぼゼロ金利が、他国の政策金利をマイナスに追い込んだ

世界の主要中銀の資金供給量はリーマンショック後に急拡大。以降は同時期の経済成長の7~8倍のペースで増えている。世界は空前のカネ余りとなっている。

図06:世界は依然として空前のカネ余り

図06:世界は依然として空前のカネ余り

金融緩和政策は英語で Easy Money Policy と呼ぶ。つまり、簡単に安く資金調達ができるようにする政策だ。金融機関はカネ余りで融資先を探し、低利での低収入を量で補おうとする。その結果、これまで融資先として不適格と見なしていた所にも貸出すようになる。同時に、信用力のない企業の債券発行ラッシュが起こり、米企業債全体の格付けをジャンク級(投資不適格)に引き下げた。

図07:ジャンク債の急増が、全体をジャンク級に引き下げた

図07:ジャンク債の急増が、全体をジャンク級に引き下げた

「ゾンビ企業」をはびこらせたイージーマネー

イージーマネーは過剰設備、過剰生産でデフレ環境を産んだ。例えば、米テキサス州では、2009年に天然ガス井が67井、原油井が40井あったが、2013年にはそれぞれ2400井、2500井、以上に急増した。もっとも、2014年後半以降リグ数は急減したが、コストの安い大油井を増産したために、生産量は高水準を維持したままだ。

また、競争力のない企業や、支援なしでは存続できないいわゆるゾンビ企業が生き残ることで、デフレ環境を助長した。

例えば、世界最大の船会社A.P.モラー・マースクの社長は、マイナス金利は船舶産業に必要不可欠な統合の動きを遅らせることで、業界に悪影響を与えていると述べた。現状の金融政策下では「統合はなかなか進まない。なぜなら、銀行は沈みかけの船会社を浮かせておけるからだ」と述べた。

図08:コンテナ船船積み価格がコスト割れまで低下

図08:コンテナ船船積み価格がコスト割れまで低下

また、デンマーク4月の消費者物価指数は前月比+0.1%、前年比横ばいと、2カ月連続で前年比の伸びがゼロとなった。マイナス金利政策を導入して約4年。金利を下げれば物価が上昇するという逆相関が完全に壊れ、むしろデフレを進展させる状況となっている。

図09:マイナス金利政策がインフレ率を押し下げている

図09:マイナス金利政策がインフレ率を押し下げている

Next: 出口のない米連銀、世界経済は深刻な危機の一歩手前

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