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霞ヶ関キャピタル Research Memo(5):物流事業を拡大、ホテル事業を回復・拡大し、新規事業にも取り組む(1)

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■事業別の取り組み

1. 物流事業
霞ヶ関キャピタル<3498>は、コロナ禍収束後の環境下では物流施設需要が大きく伸びると見込んでいる。個人向けインターネット販売市場(EC市場)の拡大を受け、宅配取扱個数は過去最高の更新が続いているが、日本のEC化率は諸外国に比べて低いことから、今後もこの増加トレンドは継続すると予想される。そのため、物流システム全体の強化、スケールアップ、効率化は社会的課題と言える。

物流施設市場の拡大に呼応して、首都圏の物流施設の空室率は2021年1月の0.2%から2024年1月には7.1%に上昇、関西圏は2021年10月の1.1%から2024年1月には3.0%に上昇している(出所:(株)一五不動産情報サービス「物流施設の賃貸マーケットに関する調査」)。物流倉庫のうち、ドライ倉庫の需給は各社の積極的な開発により過度なひっ迫感は解消されている。一方、冷凍冷蔵倉庫は徐々に設備能力は増加しているが、6大都市を中心に庫腹占有率(収容可能なスペース(庫腹)に対する貨物の埋まり具合)はひっ迫している状況だ。同社の主力商品である冷凍冷蔵倉庫及び冷凍自動倉庫は供給量が極めて少なく、需要は旺盛であることを示している。

さらに、オゾン層破壊や地球温暖化への影響の懸念から、国際協定に基づき2020年に特定フロンの生産が禁止されたことから、今後は冷凍冷蔵倉庫では地球環境に影響が少ない自然冷媒使用型への転換が求められている。また、築年数が30年を超える冷凍冷蔵庫が多数存在しており、それらがスクラップ&ビルドの対象と考えられるが、自然冷媒使用型への転換には数億円以上の設備投資が必要なため、体力の乏しい準大手企業を中心に、冷凍冷蔵倉庫の多くが一斉に廃棄される可能性が高い。一方、冷凍食品の国内消費量は、(1) 加工技術の向上、(2) 保存期間の長期化、(3) 共働き世代の増加、(4) 冷凍食品に対する抵抗感の減少などの要素により増加傾向にあり、今後も冷凍冷蔵倉庫の需要は拡大すると想定される。

労働人口の減少といった社会全体の大きな変化を背景としたEC企業による先進大型物流施設に対する需要拡大や、物流施設の省人化設備や自動化設備導入のための需要拡大は、長期的に続くトレンドであると同社は見ている。省人化による労務災害の防止や労働環境の改善、省人化による人的エラーなどの削減などを目的に、同社では特に冷凍自動倉庫が増加すると見ている。同社が開発中の冷凍自動倉庫は1階が入出荷エリアで、2階以上のマイナス25度の冷凍保管エリアでは、床を抜くことで多くの冷凍食品の保存をし、自動で荷物の出し入れを可能にする構造である。1つの冷凍自動倉庫建設にはそれ相応の資金が必要なことから、自社で建てるより賃貸で使う企業が多いと考えられる。2024年9月には所沢で第1号が完成する予定だ。

物流事業は2020年8月期に立ち上げた事業であるにもかかわらず、主力事業に急成長して全社の業績をけん引している。同社は中小規模の冷凍冷蔵倉庫をメインターゲットに物流施設開発を進めており、また2024年問題による人手不足や冷凍倉庫内での過酷な労働環境に対応する冷凍自動倉庫の開発にも積極的に取り組んでいる。

こうした環境変化を見据えて、同社では物流需要が高い地域に適切な物流施設を開発する予定である。同社では、物流ブランド「LOGI FLAG」を設立して商標を登録しており、2030年フロン規制にも適応した冷凍冷蔵倉庫「LOGI FLAG COLD」(コールド型倉庫)、冷凍自動倉庫「LOGI FLAG TECH」(オートメーション型倉庫)、「LOGI FLAG DRY&COLD」(3温度帯倉庫)の3つのタイプを提供している。

非開示案件も含むプロジェクトパイプライン及びAUMによると、2024年3月末の事業規模は18件/1,847億円(前期末比352億円増)に拡大している。また、プロジェクトパイプラインとしては首都圏・関西圏を中心に、2027年冬までに16件を竣工予定であり、うち4件が竣工済、6件が着工済である。立地条件としては、サイズはやや小さめながら、首都圏を中心に市場へのアクセスが便利な場所を選んでいる。事実、2024年9月に竣工予定の冷凍自動倉庫「LOGI FLAG TECH 所沢1」についても、早くも2023年10月にSBSゼンツウに保管容量(パレット)の約半分を貸し出す覚書を締結している。

加えて、2023年11月にはSREホールディングスと冷凍自動倉庫における冷凍保管サービスの提供及びシステム開発を趣旨とする基本合意書を締結し、X NETWORKを合弁会社として設立した。新会社では、季節要因などによる荷主の需要変動に応じて、短期間から長期間まで柔軟に、パレット単位で冷凍荷物の保管が可能なサービス・システムの提供を実現する。従来は、荷主は倉庫の空きを見つけるために、あちこちの倉庫会社に何度も電話をするというアナログ対応が必要であった。一方、新サービスでは、システム化によって、荷主は保管スペースの確認・予約、入出荷・在庫管理を簡便に行えるようになるという画期的なサービスだ。

同社の物流施設パイプラインは、2023年11月にドライ型の物流施設1件を売却したことで冷凍冷蔵機能を有する物流施設のみになり、環境配慮型の冷凍冷蔵倉庫(3温度帯含む)のみで構成される長期運用型ファンドの組成に向けた体制構築を進めている。同じく11月には物流施設を主な投資対象とする上場リートの組成を目的に霞ヶ関リートアドバイザーズを100%子会社として設立するなど、順調に事業を進捗させている。

2. ホテル事業
ホテル関連市場のうち国内旅行は、2023年9月から2024年1月までの各種データ(宿泊者数、外国人宿泊者数、消費者物価指数(宿泊料))はコロナ禍前の同期間(2019年9月から2020年1月)を上回る水準で推移している。また、インバウンド需要は、2023年5月8日よりコロナ禍に伴う水際対策措置が終了したことで、足元の外国人宿泊者数はコロナ禍前の2019年に比べて遜色ない数値にまで回復している。

同社は従来からホテル市場回復時の成長を見据えた方針を打ち出している。具体的には、一般的にグループ旅行者が全体の6割弱を占めるのに対し、3~6人部屋の供給は4割に満たないことから、同社では多人数向けホテルの需給ギャップに着目し、グループ旅行者向けのホテル開発を推進している。家族・グループ旅行などの需要に対応した同社開発のホテルは、駅から徒歩5〜10分圏内に立地し、キッチンや洗濯機などの長期滞在に対応した設備を完備した部屋を低額で提供することで、旅行客の取り込みを図っている。

同社が開発しているホテルは、3人以上のグループステイのために「広く、快適で、スタイリッシュ」な客室をリーズナブルな値段で提供することをコンセプトに、ゲストの「“Fav”orite」な空間でありたいとの願いから、ブランド名を『FAV HOTEL』と名付けている。各室の広さは35~40m2、定員は4名以上を標準プランとし、1人当たりの宿泊単価はビジネスホテル以下になるよう設定している。

ホテルでは、徹底した省力化オペレーションにより、損益分岐稼働率20%未満でも収益を生むビジネスモデル・運営体制を確立している。具体的には、予約受付から運営管理や会計報告などを標準化しIT化などによる「ホテル経営のDX化」、宿泊特化サービスを基本としながらも飲食店とフロント機能を融合した「飲食フロント融合設計」、地元のオペレーターと協業しながらもブランディング・プロモーションは同社が一元管理することで高い競争力を維持する「ブランディング一元管理」、居住に必要な設備を有し数日単位から1ヶ月以上の中期滞在までに対応する「幅広い使用用途」などである。コロナ禍により多くのホテルが休業や赤字経営を強いられたなかでも、同社のFAV HOTELは省力化スキームにより低稼働率でも運営収支が黒字化する仕組みを構築しており、すべてのホテルが黒字化している。海外旅行者数は回復・増加傾向にあり、ホテル事業は大きな利益貢献が見込まれる。

ホテルについては、プロジェクトパイプラインは稼働中ホテル13件、着工済・計画中など開発中ホテル14件がある。また、プロジェクトパイプライン及びAUMの資料では、2024年3月末の事業規模は、27件/761億円(前期末比199億円増)に拡大している。ホテルの立地は競争が激しい都内などを避け、基本的には観光地を選んでいるが、進捗は順調であることから、同社ホテルのコンセプトがマーケットで受け入れられていることが窺える。なお同社では、ホテル開発に際しては地元の銀行や建設会社を使うなど、地元の経済活性化につながるよう配慮している。

前期までに開業した ホテルにおいては、「FAV HOTEL 広島平和大通り」が2023年度グッドデザイン賞、「FAV HOTEL 熊本」がAgoda Gold Circle Award 2023受賞、「FAV TOKYO 両国」が訪日・在留外国人向けWebメディア 「Japan Web Magazine」の「10 Best New Hotels Opening in Tokyo 2023」で取り上げられるなど、同社開発ホテルは高い外部評価を獲得している。また、ホテル開発用地5件を新規に取得、開発用地3件を開発フェーズに移行、ホテル1 件を売却するなど順調に事業を進捗させている。

2023年2月にはFAV HOTEL 10件を対象とした長期運用型ファンドを組成したが、ファンド組成後も引き続きホテルのアセットマネジメントは続け、同社のビジネスモデルが完遂した初めての例となった。今後も開発案件のファンド化を進める計画だ。

2024年2月には新ブランドホテルの「FAV LUX (ファブラックス)長崎」が開業した。「FAV LUX」は、「FAV HOTEL」の大人数で楽しめる、スタイリッシュなデザインといったコンセプトはそのままに、高級サウナやバーベキューなど館内施設やアメニティをより充実させ、客室面積は「FAV HOTEL」と同等以上の広々とした空間が特徴である。同様に、2024年3月には「seven x seven (セブンバイセブン)糸島」が開業した。福岡県糸島エリアでは初となる規模のホテルで、全室がオーシャンビューである。ホテルをニュートラルなカラーに限定することで、海の眺望と自然を際立たせるデザインとし、リゾート色が強く広い間取りである。これら高級感がある新ブランドのホテルは、従来のFAV HOTELより広く1人当たりの宿泊単価が高いが、一般的なラグジュアリーホテルよりは割安である。同社では、今後もリゾート地などを中心に展開する計画である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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