北海道のバス会社「沿岸バス」の公式Xアカウントが問題提起した「相席ブロック」行為に関して、SNS上で大いに議論される展開となっているようだ。
【お知らせ】
高速乗合バスの「相席ブロック」行為について。
個人で2名分隣り合わせに予約して出発間際に1名分をキャンセルするなど、意図的に相席をブロックする行為は、絶対におやめください。 #沿岸バス(´-`).。oO(身に覚えのある方、今すぐやめて。) pic.twitter.com/3pU4fdkJyp
— 沿岸バス@6/1 高速バス「キャッシュレス決済」開始 (@enganbus) June 6, 2024
あまり耳慣れない「相席ブロック」というワードだが、これは座席予約制の高速乗合バスにおいて、個人で2名分隣り合わせに予約し、出発間際に1名分をキャンセルする……といった行為のこと。
ウェブ上の高速バス予約サイトでチケットを購入する際、その時点での空席が表示され、そこから自分の座席が選べるわけだが、その際に予約サイトのアカウントを複数使うなどして、自分の座りたい席の横隣りの席も抑えておき、その隣の席が他人に予約されることを防ぎたいといった意図のようなのだが、バス会社側からすれば機会損失にも繋がりかねない行為ということで、今回のような呼びかけとなったようだ。
安すぎるキャンセル料が原因のひとつか
いわゆる「2024年問題」による運転手不足も大きく影を落とし、2023年以降全国各地の路線において休止や廃止に追い込まれるところが多く出ている高速バス。
しかし、例えば北陸新幹線延伸により鉄道での移動が少々不便になった名古屋から北陸の各都市との間では、逆にここに来て増便される路線もあるなど、高速バスそのものの需要や存在意義はまだまだ健在といったところ。いずれにしろ各地のバス会社としては、限られた数の運転手を、好採算な路線を中心にいかに効率よく運用していくかに、以前以上に腐心しているといった状況のようだ。
そんななか、今回の沿岸バスによる呼びかけなのだが、同社の高速バスでは唯一の座席予約制である「特急はぼろ号」は、札幌~豊富間を約5時間10分で結び、同区間の片道料金は7,100円(普通旅客運賃)。
運行回数は1日4往復で、繁忙期には臨時便も出るという、同社のいわば主力路線なのだが、その路線において行われているという、先述のような相席ブロック行為。本当に利用したい客が利用できないといった事態を招いてしまうこともさることながら、ひと座席の単価もなかなかの高額であることから、同社が被る“損害”は結構甚大なものとなると想像されるところ。
ちなみにこの「特急はぼろ号」だが、客側の都合で払い戻す際の手数料は110~210円に設定されているいうことで、この安すぎる“キャンセル料”がこういった行為の横行を招いているとして、「少なくとも24時間前なら100%でいい」などといった、キャンセル料の見直しを求める意見も、多く飛び交っているようだ。
流石に払戻手数料が安すぎるのでは…
— 野乃崎明穂/綾瀬水城@NMLJ横浜2days (@jq2hrz) June 6, 2024
キャンセル料が高ければできなくなります。
少なくとも24時間前なら100%でいいと思います。— ででんのでん (@den198804) June 6, 2024
実際、京王と富士急が共同運行している高速バス「新宿~富士五湖線」においては、上記のような当日や直前でのキャンセル、さらには予約のみ行い未決済の状態で客が来ないといったケースが頻発していることから、今年7月から乗車券の決済(購入)に関しては、期限までに決済しない場合は自動キャンセルとするほか、さらに払戻し手数料も、それまで100円だったのを乗車券面記載運賃の50%に大幅アップすることに決めたとのこと。今後こういった流れが、他のバス会社や路線にも波及することは、大いに考えられそうである。
そもそもの原因である“4列シート”を無くせとの声も
このように、今回俄かに問題視される格好となった相席ブロック行為なのだが、とはいえ新幹線など鉄道車両と異なり、座席の幅が狭いバスの4列シートにおいて、隣に知らない他人が乗ってくるというのがちょっと嫌だというのは、高速バスを利用したことのある者なら誰もが抱く感情だろう。
ただでさえ昨今ではインバウンドが高速バスを利用するケースも多く、隣席が体格の良い外国人になることもままあること、さらには「香害」や「スメハラ」など他人のにおいへの不満を訴える向きも増えているということで、そういった“隣席問題”がより顕在化しているといった状況なのだ。
もっとも、こういうある意味での利用者の潜在的な要望に応えるサービスというのも、実は一部バス会社においてはすでに存在しており、たとえば長野県の伊那バスでは、一部の高速バス路線において、プラス1,000円の追加料金で2席分をまとめ売りする「ひとりだけシート」というものを用意。しかし、その設定は1便につき数席に留まるということである。
そんななかで、この手の“隣席問題”さらには相席ブロック行為を減らすため、最も有効的な手立てではないかとの声があがっているのが、4列シートではなく3列シートの車両を増やせばいいのでは……というものだ。
各座席ごとの独立性が保たれている3列シートであれば、いくら隣に体格がいい人間が座ろうが、4列シートの隣席と比べれば圧迫感は格段に下がるだろうということなのだが、その反面でバス会社からすれば、3列シート車両だと一度で乗せられる乗客数が当然減ってしまうというデメリットが。
ただでさえ運転手が不足している今の状況下では、限られた1便でより多くの乗客を乗せたいというのが、バス会社の偽らざる本音。また仮に、3列シートにして定員が減った分を運賃に転嫁しようにも、競合するバス会社あるいは鉄道との価格競争もあり、思い切った値上げは難しい……ということで、今後4列シートが3列シートへと急激に置き換わっていくといった流れは考えにくいところ。それだけに今回取沙汰されている相席ブロックのような問題、さらにそもそもの4列シートに対する潜在的な不満が解消されることは、当分の間は望み薄といった状況のようだ。
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