流通などを管理する基幹システムの障害で、今年4月から冷蔵商品の出荷を停止していた江崎グリコが、6月25日以降、一部の商品から順次出荷を再開すると発表した。
報道によれば、「アーモンド効果」や「グリコ牛乳」といった自社商品の25品目と、「トロピカーナ」など販売を受託している28品目について、25日以降に順次出荷を再開するとのこと。いっぽうで「プッチンプリン」などほかの商品については、準備が整いしだい出荷を再開するという。
システム障害の影響で売上高を200億円下押しか
今年4月3日、調達や出荷、会計などを一元管理する統合基幹業務システムを全社的に切り替えた直後という江崎グリコ。しかしその際にシステム障害が発生し、倉庫内の実際の在庫数とシステム上の在庫数が一致しないなどといった不具合が起きたため、全国の物流センターで冷蔵商品の出荷を停止することに。
その後復旧作業を進めた結果、同月18日にはいったん出荷を再開したものの、データの不具合が見つかったことや、受注分の処理が間に合わないといった理由から、再びの出荷停止となっていた。
一時は、5月中旬の出荷再開を目指して復旧作業に当たっているとのアナウンスもあったものの、結局のところ出荷が全面的に停止される期間は、実に2か月以上に及ぶことに。しかも「プッチンプリン」などに関しては、賞味期限が短く発注量が多いがゆえに物量の見通しがつきにくいため、安定供給の準備が未だ整わないとして「出荷時期は明示できない」としている状況だ。
異例の事態といった今回の件なのだが、その影響は当然業績の悪化にも繋がるようで、先月同社は2024年12月期の連結純利益に関して、従来予想では前期比6%増の150億円だったのが、同22%減の110億円になりそうだと発表。システム障害による業績への影響として、通期の営業利益を60億円、売上高を200億円下押しすると試算しているというのだ。
いっぽうで、今回の業務システムの切り替えに関しては「デロイト トーマツ コンサルティング」を主幹ベンダーとして進めていたとのことだが、一部メディアによれば新システムへの移行が1年以上も延期していたうえでの、今回のシステム障害発生だったということで、いわばボロボロの態勢だったのではとの推測も。
さらに江崎グリコの件と時を同じくして、衛生用品大手の「ユニ・チャーム」でも、基幹システム更新に伴う不具合が発生し、紙おむつなどの納品が遅れる事態となっているのだが、これもデロイトが手掛けていたものだとの報道もあり、同社の信頼性が大いに揺らぐ事態となっているというのだ。
社内SEへのまさかの待遇に「倍は出さないと」との声
江崎グリコにとっては、世界の会計事務所のなかでも“ビッグ4”と呼ばれるなかの一角であるデロイトが、まさかここまでの体たらくとは……といった思いも当然あるはずで、実際今回の件が落ち着けば、デロイトに対し損害賠償を求めて法的手段を取るのでは……といった話も一部では取沙汰されているよう。
巷でも、この件に関しては江崎グリコにとってある意味で“もらい事故”だといった見方も多分にされているところなのだが、しかしながらここに来て同社に対しての批判の声も俄かにあがっているところ。
というのも、今回の騒動との直接的な関連は不明なものの、江崎グリコでは現在社内SEを募集しているというのだが、その予定給与が500万円~850万円と、かなりの渋チン設定なのが発覚したからだ。
未だにプッチンプリンが店頭に並ばないグリコが社内SEを募集してますが、
正直言って年収500-850万円では安すぎ江崎グリコ株式会社/【大阪】社内SE(SAPベーシス・インフラ担当)◆創立100年以上のグリコグループの情報システム部門/勤務地:大阪市西淀川区の求人情報 https://t.co/s6VCNM0BOo
— お茶の水博士 (@masaki2115) June 12, 2024
ただのコーダーしか集まらん気が。倍は出さないと。何で出し渋ってるんだろ。 https://t.co/1u8zXovN1D
— WaterLilyLLC (@waterlily_biz) June 12, 2024
システム入れ替えの失敗で何百億も損害を出したのに、新規のSEに2000万とか出せない時点でグリコはダメ。1億出しても損害の規模から見たらカスみたいなもんでしょ。 https://t.co/BJ8ay4KV8W
— 無知蒙昧の化身 (@SepiaSandCreate) June 11, 2024
SNS上からは「倍は出さないと。何で出し渋ってるんだろ。」「1億出しても損害の規模から見たらカスみたいなもんでしょ。」などと、現状システムの障害で大きな損害が出ている状況にも関わらず、いかにもケチケチな提示に対して、怒りというよりも呆れる声が噴出しているところ。
またそれとともに、江崎グリコ側がIT技術者の適正価格を解していないことが、このことからも分かるということで、「そんなだからコケたあとまだ立ち上がれないのだわ」といった声もあがっているというのだ。
IT技術者の適正価格が解ってない人達が上にいるからこうなる。。。
もっというと「技術」と言うものが端金で湧いて出てくると思ってるんよな。— 緑茶@紙ストロー撲滅運動 (@Greentea315) June 12, 2024
グリコが今更ながらにSAPできる社内SE探してるけど、社内システムを支える精鋭部隊です→年収500-850万じゃ今どきロクな人材来ないでしょ…
わざわざ子会社に送るんだし親会社の給与のキャップ外しなさいよ
そんなだからコケたあとまだ立ち上がれないのだわhttps://t.co/YfSimwuJ1b pic.twitter.com/YohgDn2DCs— とあるコンサルタント (@consultnt_a) June 11, 2024
先述の通り、同社の主力商品である「プッチンプリン」はいまだ出荷再開のメドが立たず、いくら超定番であるとはいえ、これ以上長期間の商品不在となれば、コンビニやスーパーなどの売り場において、他社商品に棚が奪われるといった事態も大いに考えられるところ。
誰もが予想していた以上に長引く格好となっている江崎グリコのシステム障害問題なのだが、出荷再開の時期がこれまで何度も先延ばしにされたことや、上記のような状況を鑑みても、「プッチンプリン」ファンの期待も空しく、出荷停止期間がさらに伸びる可能性も大いにありえそうだ。
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