ヘルスケアブランド「めぐりズム」を展開する花王が、自社の意匠権を侵害されたとして、東京地裁にアイリスオーヤマの製品の販売差し止めを求める仮処分を、2日に申し立てたと発表した。
報道によれば、対象の商品はアイリスオーヤマの「モイスクル じんわりホットアイマスク」シリーズの4商品。
花王は、「めぐりズム」シリーズの技術開発に1990年代より着手しており、現在までに“ホットアイマスク”という新たな市場を確立するに至ったと主張。長い時間をかけて広く認知され、信頼を築いてきたホットアイマスク市場が、類似品によってその信頼を損なわれることを強く懸念している、とコメントしている。
あの“超定番”な耳掛け形状の模倣を問題視?
目元だけでなく肩や腰などに装着して疲れを癒やす花王の温熱シート「めぐりズム」シリーズといえば、23年も国内だけで100億円超(出荷額)を売り上げたという、いまや同社の押しも押されぬ大ヒットかつロングセラー商品。
なかでも目元用のホットアイマスクといえば、2007年10月に発売された「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」がその先駆けとなったわけだが、パソコン作業などで目元を日々酷使するといった人々にとっては、いまや欠かせないアイテムといっても過言ではないだろう。
そのいっぽうで、渦中のアイリスオーヤマ「モイスクル じんわりホットアイマスク」のほうだが、Amazonでの取り扱い開始日を見てみると2024年3月ということで、恐らくはそのタイミングから販売が始まった、比較的新しい商品の模様。
ちなみに商品ラインナップは、無香料かラベンダーかの違いに、それぞれ10枚入り・5枚入りで全4種類ということなのだが、先述の通りそのすべてが販売差し止めを求められているようだ。
今回花王側はリリースのなかで、自社が保有する意匠権(登録1330629号)を侵害すると記載しているのだが、その意匠権の内容を見てみると、登録日は2008年4月18日となっており、その説明として「本物品は、伸縮性の不織布からなる耳掛け部を有する目元用温熱シートである。」「不織布と樹脂シートの層からなるシート部材に発熱体を収容した状態でシールされている。折り畳まれた耳掛け部を開き、目元から耳にかけて装着する。」とある。
要は「めぐりズム」のホットアイマスクを使ったことのある人なら誰もがお馴染みな、あの商品の形状を説明したものなのだが、対するアイリスオーヤマの商品のほうも、確かにミシン目入りの不織布シートでもって耳に引っ掛けるといった作りに。
今のところ花王側が、具体的にどういったところが自社の意匠権に抵触したと判断したのかの説明がないため、分からない点も多いのだが、こうしてみるとやはりこの“超定番”な形状を、アイリスオーヤマ側が採用したことを、どうやら問題視しているとみて間違いがなさそうだ。
「めぐりズムのほうが安く売ってる」との声も
花王側は今回のリリースのなかで「長い時間をかけて広く認知され、信頼を築いてきたホットアイマスク市場が、類似品によってその信頼を損なわれることを強く懸念しています」「自社の知的財産権が侵害されたと判断した場合は、毅然とした態度で臨んでいます」とコメントしているように、かなり怒り心頭といった様子。
いっぽうで対するアイリスオーヤマなといえば、大手家電メーカーの退職者を積極的に採用したことにより実現した、いわゆる廉価な“ジェネリック家電”の展開も過去にあり、世間的には“模倣”、有り体に言えば“パクリ”上等といったイメージもあるだけに、今回の件も「またやらかした」といった反応も少なくないところ。
しかしながら、今回の件でもてっきりアイリスオーヤマが先行商品の廉価版を世に出し、市場をある意味で荒らしている状況……かと思いきや、どうやら実際はそうではなく、むしろ「めぐりズム」のほうが安いといった声も一部からはあがっているようだ。
ホットアイマスク問題。
てっきりアイリスがめっちゃ安い値段で売り出して花王がキーッってなっているのかと思っていたら、どの店舗もだいたい花王のめぐりズムの方が安い笑独占したいだけ?
パケはアイリスのがおしゃれではある。
— イロドリ★トレンド追っかけ隊 (@trend_irodori) July 9, 2024
そういうこととなると、花王側はただ純粋に、これまで30年以上の年月をかけて研究・開発を重ね、やがて一大市場に成長したホットアイマスクという市場をただただ守りたい一心だというのが、より切実に伝わってくるのであるが、だとするとアイリスオーヤマはそんな汗と努力の結晶を、今回あまりにも安易にサクッとパクってしまう格好に。
そんなアイリスオーヤマだが、今回販売差し止めを求める仮処分を申し立てられたことに関して、「現段階で訴状が届いていません。届き次第、内容を確認し、会社としての対応を検討します」とコメントするに留まっている状況。恐らくは想定外だったであろう花王側の怒りぶりに、アイリスオーヤマが果たしてどのように対応するのか、今後の動きが大いに気になるところである。
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