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青森・弘前の老舗百貨店「中三」が突如閉店。市民のソウルフード「中みそ」消滅を嘆く声、さらには大鰐線存続への影響を心配する反応も

青森県弘前市の老舗百貨店「中三」が29日付けで事業を停止し、営業を終了したことが大きな波紋を呼んでいるようだ。

報道によれば、かねてからの業績の悪化を止められず、事業の継続が難しくなったとして、中三を運営する企業が、青森地裁弘前支部に破産手続きの開始決定を申し立て、その決定を受けたとのこと。負債総額は現時点で約9億円だという。

1896年に五所川原市で呉服店として創業した中三は、その後百貨店事業も始め、弘前市の店舗は1962年に開店。青森県内のみならず岩手県や秋田県にも進出し、1998年8月期には415億円の売上を計上していた。

しかし、その後は郊外型大型ショッピングセンターの進出もあり、業績が徐々に悪化していき、さらには東日本大震災の影響も甚大で、翌2012年には民事再生手続きを申し立て。投資ファンドのもとで事業の再建を図っていたのだが、その後も経営難が続き、5年前には青森市内にあった店舗が閉店。弘前店のみの営業となっていた。

棚卸のため出社した従業員に対し朝礼時に解雇通告

今回経営不振による突然の営業終了となった中三弘前店だが、事前告知においては決算棚卸という名目で、28日は午後4時に閉店、29日は全館臨時休業と伝えられていたようなのだが、結局はこの28日が“最後の営業日”に。

85人いた従業員は、29日に棚卸ということで出社した際の朝礼の場で、破産の事実をいきなり告げられ、そのまま全員解雇となったといい、さらには取引業者やテナント関係者への事前通告も無かったということで、かなりドタバタな閉店劇だった模様。

ただ一部の卸業者などによれば、去年あたりから入金の遅れがあり、催促しに行かないと支払われないこともあったということで、今回起きた出来事の“予兆”を感じ取っていた外部関係者も少なからずいたようだ。

もっとも予兆ということでいえば、今年に入り書店のジュンク堂が撤退するなど、入居していたテナントの閉店が、ここ最近は目立っていたということだが、とはいえ同地で長年営業を続けていた百貨店の突然の営業終了に、地元客の間でも大きな動揺が走っているところ。

なかでも、建築家・毛綱毅曠氏が手掛けた特徴的な同店の建物が、今後の再開発により解体されてしまう予定である点、さらに同店内のフードコートに入居し、名物の味噌ラーメンが多くの弘前市民からソウルフードとして愛されていた「中みそ」が、中三と命運を共にする形となってしまったことに対する、悲しみの反応が特に多くみられるいった状況だ。

弘前市内ではイトーヨーカドーも9月に閉店

いっぽうで弘前市内では、来る9月には「イトーヨーカドー弘前店」が閉店することもすでに決まっており、今回の中三の閉店も相まって、都市中央部の空洞化がさらに進むと危惧する声も多数あがっているところ。

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さらには中三弘前店のほど近くに終着駅の中央弘前駅を構える、弘南鉄道大鰐線の存続にも、今回の倒産劇は暗い影を落としそうといった見立ても、SNS上ではかなり飛び交っているようだ。

百貨店業界といえば、ピーク時と比較してその市場規模は約30年でほぼ半減、また全国の店舗数も、ここ20年ちょっとで約4割も減るなど、かねてからその凋落ぶりが伝えられているところ。

今年に入ってからも、1月には島根県松江市にあった「一畑百貨店」にくわえ、愛知県一宮市の「名鉄百貨店一宮店」、そして広島県尾道市の「尾道福屋」が相次いで閉店したほか、最近だと7月に岐阜県内唯一の百貨店だった「岐阜高島屋」も閉店。

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さらには長野県松本市にある「井上百貨店」も、店舗の老朽化などを理由に来年3月末で営業を終えることを発表するなど、今回の中三もそうだが地場独立系の百貨店は、特に苦境が続いているといった状況。地方都市にとって百貨店の閉店は、ただ単に買い物の場が減るだけでなく、街全体の賑わいの喪失や地域公共交通の衰退にも繋がりかねないということで、今後現れる影響が大いに心配されるところである。

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