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イトーキ「公取委から警告」で株価下落。社内の“前例踏襲主義”一掃で業績V字回復も外部の運送業者には悪習の“タダ働き”を長らく強要

オフィス家具大手の「イトーキ」が、配送事業者への残業代不払いなどの行為があったと発覚し、これが独占禁止法違反にあたるおそれがあるとして、公正取引委員会が近く警告する方針を固めたと報じられている。

報道によれば、イトーキは家具の運送や組み立てなどの作業を数十の業者に委託していうたが、繁忙期にトラックの運転手が契約していた時間を超えて働いた分の料金を支払っていなかったとのこと。

また、イトーキの物流拠点での家具の積み込み作業や、配送に使用した梱包材を同拠点に引き渡す作業を、運転手に無償で行わせていたという。

独禁法では、荷主による優越的地位の乱用を規制する「物流特殊指定」を規定しており、公取委は今回の件を、この指定で禁止している「不当な経済上の利益の提供要請」に該当する恐れがあると断したとみられる。

イトーキは差額を全額支払う方針も…

物流業界における悪しき慣習として残り続けている、今回のような運送以外の付帯作業を荷主が半ば強要するといった行為。

その発生の原因となったとされるのが、1990年に施行された「物流二法」。トラック事業への参入が免許制から許可制に変更されるという、このいわゆる規制緩和により、新規参入が激増した同業界では過当競争が発生。運送業務以外の付帯作業が、一種のサービスとして広まったわけだ。

イトーキ側は、そういった業界の慣習に乗っかる形で、ドライバーにサービスを当たり前のように要求し、それでいてその対価を払わないという、いわゆる“タダ働き”を強いていたということだが、イトーキ側は今回指摘されている事実を認め、不利益を受けた運送事業者に対して、本来受け取れるはずだった報酬との差額を全額支払う方針だということ。

しかし、このタダ働きの状況は、各運送会社との委託が始まった当初から常態化していたということで、不当に働かせていた分の差額は、まともに計算すればかなりの金額になることも大いに考えられるところである。

社長はつい先日『カンブリア宮殿』にも登場

このように今回大いに取沙汰されているイトーキだが、同社といえば約1か月ぐらい前には、テレビ東京系の人気経済番組『カンブリア宮殿』にも取り上げられたばかり。

現在、イトーキの社長を務めるのは外資系の日本オラクルでCOOを務めた後に、老舗企業であるイトーキに移ってきたという人物なのだが、その移籍当時のイトーキはというと2期連続で赤字を計上中。かつての開拓精神はすっかり鳴りを潜め、他社と同じものを後追いで作って安く売るといった、まさに泥舟の状況だったという。

そこで現社長は会社の復活のため、社内に蔓延していた「これまでのままでいい」といった“前例踏襲主義”を払拭させるなどの取り組みを行い、若手を中心とした社員らのやる気を取り戻すことに成功。その結果、わずか2年で利益を5倍に増やし、1329億円という過去最高の売上高を達成するまでに至ったというのだ。

今では会社の雰囲気も一転して明るくなり、社長も社内の若手らに慕われて……といった、まさにホワイト企業そのものといったイメージを植えつける内容だったという同番組。しかし、今回の件ではそんな好印象とは裏腹に、外部の委託運送業者に対しては“前例踏襲”のタダ働きを長きに渡って強いるという、かなりのブラックぶりが露呈することに。

その影響も大いにあってか、今回の件が明るみになった19日のイトーキ株は、午前の取引で一時前日比6.8%安となるなど大幅な下落に。その企業イメージの失墜が、まさに株価に連動する格好となったようだ。

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