暗号通貨が全面的に下落している。また株式市場との連動性が薄れつつある兆しや、ステーブルコインの規制整備と普及の進展など、暗号資産市場には新たな潮流も見え始めている。今後どうなるのかさまざまな見方があるなか、今後を展望する。(『 ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン 』高島康司)
※本記事は『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』2025年4月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
大きく下げている暗号通貨
ビットコインを中心とする暗号通貨は全面安の状態だ(原稿執筆時点:2025年4月8日)。
ビットコインは過去5日間で6.61%下落している。4月7日現在で1,138万円前後で取引されている。またリップルも過去5日間で5.56%の下げだ。4月7日現在では、282円前後で取引されている。
株価との連動性が解除されつつある暗号通貨
暗号通貨の下げの原因は、株価の大幅な下落である。
4月3日、トランプ政権は予想を越える税率の相互関税を発表した。日本は24%、中国は34%に関税が引き上げられる。これが引き起こす景気の深刻な後退懸念から、株価が大幅に下落したことにある。ダウは5.50%、日経も6.12%の下落である。
これに引きずられてビットコインを中心とする暗号通貨も下落したのだ。
しかし、今回の下落は暗号通貨の今後の相場を占う上で、大きな意味を持つようだ。SNSではこれから2008年の「リーマンショック」や1987年の「ブラックマンデー」のような金融危機のいわば前哨戦なので、これからさらに大幅に下がる可能性が高いとの観測もある。
しかし、これとは大きく異なった見方もある。これまでビットコインを中心とする暗号通貨の相場は、株式、特にハイテク株が上場しているナスダックと連動しているとされているが、相互関税の発表以降の相場では、この連動性がうすくなってきているのだ。
ナスダックは、ビットコインと正の相関関係があることで知られるウォール街のハイテク株指数だが、トランプ大統領が3日に180カ国への相互関税を発表し、貿易摩擦をエスカレートさせ、中国からの報復課税を引き寄せて以来、11%下落している。
他の米国指標や世界市場も、豪ドルのようなリスク通貨の急落や金の反落とともに打撃を受けている。
一方4日の時点では、ビットコインはほぼ安定しており、80,000ドル以上で取引を続けていた。また過去5日間では下落しているものの、7日には1.55%と上昇している。他方ダウは5.50%、日経は5.72%、そしてナスダックにいたっては7.51%の下落である。
明らかにビットコインの株価との連動性は解除される方向に向かっている。
ビットコインの安定性は増しているようだ。このような安定性の認識はすぐに自己成就予言へと変化し、ビットコインの避難資産としての地位を今後何年にもわたって強固なものにする可能性がある。
ギリシャ国債の暴落から始まった「PIGGS危機」にEUが揺れていた2010年から2011年にかけて、株価が暴落する中、ビットコインは大幅に高騰していた。これはビットコインがリスク避難資産として好まれ、金のような安定資産として買われていたからだ。
しかし現在は、ビットコインETFが株式市場で販売されるようになってから、ビットコインと株式相場との連動性は高くなっていた。だが、相互関税の発表後は、ビットコインは2010年当時のようにリスク避難資産として認識され、逆に相場が上昇する可能性もささやかれるようになっている。