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いつまで安全?「リスク回避の円買い」に走る外国人のナニワ金融道=東条雅彦

一番のお金持ちは「個人(家計)」

この3者の資産と負債がどうなっているのかを確認しましょう。日銀が作成した2016年第1四半期の資金循環(速報)から数字を拾っていきます。

金融機関は法人と個人の資金を預かっている中継機関であるため、ここでは除いて、法人、個人(家計)、政府の資産額と負債額を明らかにします。

<法人>
・資産 1,094兆円 ・負債 1,428兆円 → ・正味資産 ▲334兆円
<個人(家計)>
・資産 1,706兆円 ・負債 390兆円 → ・正味資産 1,316兆円
<政府>
・資産 554兆円 ・負債 1,245兆円 → ・正味資産 ▲691兆円
※「▲」はマイナス

政府の負債は1200兆円を突破していて、圧倒的に多いです。一方、我が国では個人(家計)の資産が1700兆円以上あり、政府の負債よりも大きな金額になっています。

これは個人、つまり、私たちは、政府が国債を返済できなくなっても、保証できるだけの資産を持っていることを意味します。

我が国のGDPは約500兆円。政府の負債は対GDP比で240%以上を突破しています。法人、個人、政府という経済における主要3者を総合的に見ると、個人の資産が圧倒的に多く、政府の連帯保証人としての役割りを十分に果たせると言えます。

つまり、下記の2点を重視して、海外投資家は通貨「円」を「安全資産」と見做しているのです。

  • 安定したキャッシュフローがある(経常収支が黒字、かつ、対外純資産が多い)
  • 担保がある/連帯保証人がいる(個人の資産が政府の負債よりも多い)

ただし、通貨「円」は相対的に評価されているに過ぎない!

海外投資家の場合は、通貨「円」で生活しているわけではありません。ここが国内投資家との最大の相違点です。

つまり、海外投資家が通貨「円」を持っていても、一時的な避難先にしかならないということです。

空から飛来してくる爆弾から身を守る防空壕にはなっても、長期的に住む家にはなりません。だから、長期的に通貨「円」が安全資産になっているわけではないので、その点は誤解しないでください。

米ドル、ユーロ、円という世界3大通貨の中で、今回、イギリスのEU離脱により、ユーロが売られました。

ユーロが下がった分、相対的にドルと円が上がっただけです。永久に通貨「円」が上昇し続けることは難しいと思います。

なぜなら、最終的には通貨の価値も株式や不動産などの他の資産と同じく、ファンダメンタルズの価値に帰着するためです。

日本のGDPは現在、世界第3位です。

<2016年 GDPランキング>

1位:アメリカ
2位:中国
3位:日本

これがゴールドマン・サックスの予想によれば、2050年には日本は8位まで落ちます。シティグループによる長期予想でもほぼ同じ結果になっています。

2020年までは世界第3位の地位を維持できますが、2030年には4位、2040年には8位に転落する予想になっています。

<2050年 GDPランキング(ゴールドマン・サックスによる予想)>

1位:中国
2位:アメリカ
3位:インド
4位:ブラジル
5位:メキシコ
6位:ロシア
7位:インドネシア
8位:日本
9位:イギリス
10位:ドイツ

世界経済の中での相対的な地位が低下していく中で、当然、通貨「円」の価値も下がっていくはずです。

Next: いったい何が起こる?日本円が「リスク資産」になるとき

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