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実質テーパリング? 日銀の国債買入縮小で何が起きるのか=久保田博幸

日銀のテーパリングにより長期金利が飛び跳ねる危険性も

2013年6月19日のFOMC後の記者会見において、当時のバーナンキ議長は、失業率が低下基調を維持するなどの経済情勢が見通しどおりに改善すれば、今年後半に資産購入プログラム(LSAP)の規模縮小をスタートさせる(つまりテーパリング)のが適当と見ていると述べた。

これをきっかけに米国の株式や債券が大きく下落し、これは「バーナンキ・ショック」と呼ばれた。同様の事態が東京市場で起きる懸念はある。

最も注意すべきことは、日本の債券市場は日銀の国債買入の減額をタブー視していたという歴史が存在するということである。これにはいろいろな要因が重なってのものと思われるが、そのひとつが1998年末の資金運用部ショックと呼ばれる国債価格の急落が、日銀ではないが資金運用部の国債買入減額をひとつのきっかけとなっていたことが挙げられる。

日銀は2006年に量的緩和政策とゼロ金利政策を解除したが、その際には国債の買い入れ額は維持している(テーパリングはしていない)。それ以前に速水総裁時代は量的緩和として国債の買い入れ増額を何度か決めていたものの、福井総裁時代は量を増やしても国債の買い入れ額には手を付けていなかった。これは国債買入の減額が難しいことを認識していたからであろう。

白川総裁時代でも国債買入には慎重となり、2010年10月に決めた包括緩和政策では別枠で国債買入を増額するとしたが、少し待てば償還されて減額も容易な中期債に限っていた。

しかし、黒田総裁はそんなタブーは無視して巨額の国債買入と買い入れる国債の年限も思い切って長期化していた。これによりむしろテーパリングをさらに困難にさせたともいえる。

日銀が自発的にテーパリングを行うとすれば物価目標が達成した結果ということになろうが、果たして物価目標は達成できるのか。このままずるずると巨額の国債買入を続けていると、いずれ国内投資家からの保有国債の引きはがしにも限界がくる。そのときにしかたなく日銀がテーパリングを行うことになれば、市場は大きく動揺することも予想される。

何度も繰り返すが日銀は今まで国債買入の額を減らした経験はない。米国でテーパリングが成功したからといって日本でも問題ないとは言い切れない。かなりうまく市場との対話を進めない限り、日銀のテーパリングにより長期金利が飛び跳ねる危険性もあるのである。

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牛さん熊さんの本日の債券』2016年8月12日号より
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