「判断ミス」を暗に認めたイエレン
フィッ シャー副議長は、9月に利上げが実施され、年内に複数回の利上げがあると予期するべきかとのCNBCの質問に対し、「イエレン議長がこの日の講演で述べた ことは、この2つの質問に対し『イエス』と答えることと整合性が取れている」と述べた。ただ、こうしたことは経済指標次第となるとの見方も示した。
フィッシャーFRB副議長はイエレンFRB議長の側近中の側近なので、「イエレンFRB議長は相変わらず時期の明示をしなかったものの、発言の真意は年内利上げにあり、場合によっては9月利上げの道筋も残されているという意味だったようだ」とマーケットが解釈したのです。
これを受けて26日金曜のマーケットは、ダウとS&P500は下落して終わり、債券が利上げを織り込み下落し、ドルは上昇したのです。
つまり、一部報道にあるように、「イエレンFRB議長が9月利上げを示唆」したのではありません。フィッシャー副議長によれば、「イエレンFRB議長の発言では、9月利上げの可能性排除されていない」ということだけです。
ただ、イエレンFRB議長が「金利引き上げの論拠はこの数ヶ月で強まった」と述べたことは、「6月FOMCで突如弱気に変節したのはミスだったかもしれない」ということを暗に認めているといっても良いので、現在のFOMCメンバーたちは早々の利上げを予想していた今年5月のような心境だと思われます。
日本株上昇の持続性や上値余地は乏しい
このイエレンFRB議長発言を受けて今後の日本株がどうなるかですが、短期的にはドル高のおかげで円高が柔らぐので日本株は上がり易くなりますが、その持続性や上値は乏しいと見ています。
まず、金曜のNY市場で円が売られたのは円固有の要因ではなく、ドルの下落に伴ってのものに過ぎません。
基軸通貨国である米国の利上げは、世界中にばら撒かれたドルが本国へ還流することを意味しますので、新興国やコモディティは下落しやすくなります。また、金利上昇の結果、株式のリスクプレミアムが上昇するために、世界的に株式が調整しやすくなります。
今年1月の初回利上げ時に世界のマーケットがどうなったかと思い出せば分かるように、ドルが上がると危機的になるアセットや国は数多く有ります。
例えば、中国は労働者の賃金高騰で中国の輸出競争力が低下しているので、ドル高になると中国元を切り下げないと、ただでさえ不振の中国輸出は更に落ち込むのは不可避です。
これを避けるために昨年8月や今年1月に中国当局は元を切り下げ、この結果世界的な急落を招いたのですから、米国の利上げは新興国通貨安やコモディティ安だけでなく、過去1年の株価急落の元凶である中国の元切り下げを誘発しやすいのです。