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「利上げ健忘症」の市場を正気に戻すFRB要人“タカ派発言”の本気度は?=近藤駿介

投資家にとっては喜ばしい「利上げ先送り期待による株高」は、「金利の正常化」と「準備預金の正常化」という「2つの正常化」を目指さなければならないFRBにとって、歓迎すべきものではないということは意識しておく必要がある。(『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』近藤駿介)

プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ)
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝える無料メルマガに加え、有料版『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』を好評配信中。

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ローゼングレン総裁の発言で高まる利上げ観測

週末9日の米国株式市場は利上げ観測の高まりを受け前日比394ドル安と大幅に3日続落し、約2カ月ぶりの安値を記録した。

米供給管理協会(ISM)が6日に発表した8月の非製造業部門総合指数は、生産や受注の落ち込みによって前月比4.1ポイント低下の51.4と、2010年2月以来およそ6年半ぶりの低水準に落ち込んだ。市場予想を大きく下回る低調な結果によって、市場の利上げ観測は急速に萎んだが、それを再び呼び起こしたのが、先週末のボストン連銀ローゼングレン総裁の発言。

FOMCでの投票権を持つ「ハト派」と目されているローゼングレン総裁による「緩やかなペースでの緩和策解除を続けなければ、この回復局面は長くなるよりも、むしろ短くなる可能性がある」という「タカ派」発言は、市場にFRBの利上げが依然として射程圏内にあることを思い出させるに十分な内容だった。

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先月のダドリーニューヨーク連銀総裁が発した「市場は利上げの可能性を過小評価している」という警告に続く、「ハト派」と目されていたローゼングレン総裁による「タカ派」発言は、FRBが法定準備預金の15倍近く積まれている超過準備預金の存在を警戒し、「Behind the curve(政策が後手に回ること)」に陥らないよう細心の注意を払っていることを感じさせるもの。

投資家にとっては喜ばしい「利上げ先送り期待による株高」は、「金利の正常化」と「準備預金の正常化」という「2つの正常化」を目指さなければならないFRBにとって、歓迎すべきものではないということは意識しておく必要がある。

ローゼングレン総裁による「タカ派」発言によって利上げ観測が高まったことでニューヨーク株式市場は大きく下落したが、市場が織り込む9月の利上げは24%(CME Fed Watch)に留まっている。

「Behind the curve(政策が後手に回ること)」に陥ることを警戒しているFRBからすると、依然として「市場は利上げの可能性を過小評価している」といえる状況にあり、この先も利上げ先送り観測によって株価が上昇する局面で、FRB要人から「タカ派的発言」を繰り返される可能性は高い

Next: 注目の12日講演、ハト派のブレイナード理事はタカ派に寝返るか?

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