トランプ大統領の内政問題が引き起こす恐怖
アメリカ、ヨーロッパ、日本の現状を見ていくと、ヨーロッパでは非常に懸念のあったフランス大統領選挙で、ルペン氏、マクロン氏の一騎打ちとなり、結局マクロン氏が勝ちました。やはりルペン氏になると、EU離脱ということになり、フランスがEU離脱となるとなんのためにEUがあるかわからなくなってしまいます。
ヨーロッパはずっと戦争をしてきていて、特にフランスとドイツの仲が悪いのです。歴史上、第一次大戦、第二次大戦と、ずっと喧嘩をし続けてきたのがフランスとドイツなのです。この2つの国をなんとか仲良くさせようとできたのがEUなのです。そのフランスが離脱となれば大変なことになり、実際にEUが崩壊するということにもなるでしょう。
イギリスの離脱に関しては、地理的にも離れている上に、通貨もユーロを使わずにポンドを使っていたので、確かにイギリスのユーロ離脱は大きいものの、影響は限られます。むしろフランスが離脱となれば、Brexitどころの騒ぎではないというわけです。マクロン氏の勝利によってEUの崩壊が遠のいたということになり、とりあえず足元の欧州に関しては、少し心配感がなくなってきたと言えるでしょう。また、ヨーロッパでは引き続き量的金融緩和を実施していますが、そろそろ出口というものを模索し始めたところだと思います。
一方、アメリカはトランプ大統領の内政が問題となっています。トランプ大統領は様々な政策を打ち出していますが、内政に関しては、どうも国民の評価が低いという状況です。特にFBIコミー長官を更迭したことは、いろいろな面から考えて厳しい可能性があると言えます。
結局、内政がうまくいかないと外交で得点を稼ごうとします。それにより誰か敵を作ってしまうということで、北朝鮮の問題が心配になっているというのがアメリカの現状だと言えます。
そして、日本に関しては、日銀黒田総裁は頑張っているわけですが、正直今のところ全く何も打つ手がない状況です。何もしようがないので、今の金融緩和を持続していくしかないだろうという状況です。インフレ目標2%と言ってもなかなか達成できず、ただ、景気はそれほど悪くはないものの、物価がそれほど上がっていかないというところです。現状はそれほど悪い状態ではなく、景気はそこそこ良いと思われるので、打つ手なしと言うほどのひどい状況ではないように思います。こうしたところが現在の大きな先進諸国の動きです。
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『グローバルマネー・ジャーナル』(2017年5月25日号)より抜粋
※記事タイトル、太字はMONEY VOICE編集部による
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