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レームダックTPP=青木泰樹 京都大学レジリエンス実践ユニット・特任教授

翻って、日本の場合はどうでしょう。
トランプ大統領の誕生を横目に、11月10日に衆議院本会議で
「TPP(環太平洋経済連携協定)関連法案」が可決されました。

TPPが米国の離脱により頓挫するのが間違いない中で、
安倍政権がグローバル化を選択したことに唖然(あぜん)とするばかりです。

「自国のルールは自国で決める(国家主権)、
決めるには国民の多数の同意が必要だ(民主主義)」
というのが普通の独立国家です。

自国のルールを外国の巨大資本が決めたり、
時の権力者が勝手に決めたりするのがグローバル化の姿です。

安倍総理は、アベノミクスの第三の矢である
成長戦略の中心がTPPであると位置づけてきました。

それに対して三橋さんをはじめとする識者の方たちが
様々な角度から批判を展開してきました。

屋上屋を架すことは憚られるので、
今回はTPPの具体的内容には立ち入らず、
TPPとグローバル化の関係、
およびその構造について解説したいと思います。

グローバル化は、ヒト、モノ、カネが国境を越えて
自由に移動できる状況と捉えがちですが、
それは現象面にすぎません。

なぜそうした動きが生じるのかを考えることが肝要です。

端的に言って、グローバル化とは外面上は
「世界規模で最も効率的な生産システムを構築すること」です。

分かり易く言えば、「世界をひとつの工場にする」ことです
(究極の国際分業化、経済学ではグローバル・バリュー・チェーンGVCと言ったりします)。
そうした資本主義段階を指すわけです。

言うまでもなく、そうした生産システムを
作り出したい意図は、資本の収益率を最大化するためです。

それによって最も利益を得るのは
金融資本やグローバル企業ですから、
必然的にグローバル化を推進する
政治的ムーブメントが生まれます。

私はそれをグローバリズムと定義しています
(グローバル化と資本収益率の関係に関しては、
下記拙著の第7章「経済効率の正しい考え方」参照)。
https://www.amazon.co.jp/dp/4757224257

ただし、世界で最も効率的な生産システムを
つくるといっても一朝一夕にできるわけではありません。

少しずつ段階を踏む必要があるのです。

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